短いプロンプトだけで電話対応ができた|ElevenLabsの新音声AI「Eleven Realtime」を日本語で試してみた

短いプロンプトだけで電話対応ができた|ElevenLabsの新音声AI「Eleven Realtime」を日本語で試してみた

結論:20行ほどのプロンプトだけで、電話対応が成り立った

ElevenLabsが2026年10月20日に発表した音声エージェント用のモデル「Eleven Realtime」を、架空の通販サイトの電話サポート役にして、日本語で試してみました。

いちばん驚いたのは、指示(プロンプト)の短さです。これまで音声AIを作るときは、「こう聞かれたらこう答える」「この順番で確認する」と細かく決めて、ようやく正しい会話になる、ということがよくありました。今回は、注文データと返品ルールを含めて20行ほどの指示を書いただけで、注文番号の確認、お届け日の案内、返品できるかの判断まで、電話らしい会話になりました。

上位版の「v1 Max」は、返品の判断で一度言い間違えながらも、自分で訂正して正しい答えにたどり着きました。下位版の「v1 Mini」は「返品できます」と誤った案内をしたので、ルールに沿って判断する電話対応ならMaxを選ぶのがおすすめです。

話の途中で割り込むと、どちらもすぐに話をやめて聞いてくれます。返事が来るまでの速さは、実際の会話で1秒前後でした。一方で、相槌をあとから「お客さんの返事」として受け取り、同じ説明を繰り返す惜しい場面もありました。

【動画①:Maxで配送状況を問い合わせた会話(約1分)】

Eleven Realtimeとは?

Eleven Realtimeは、AIと音声で会話する「音声エージェント」を作るためのモデルです。電話の自動応答や、Webサイトで話しかけられる案内係などを作るときに使います。

これまでのElevenLabsでは、声を文字にする「耳」、答えを考える「頭」、答えを声にする「口」を、それぞれ自分で選んで組み合わせる必要がありました。Eleven Realtimeでは、これらをElevenLabsがまとめて調整してくれるので、モデルを1つ選ぶだけで会話を始められます。

モデルは2種類あります。

  • v1 Mini:安く、テンポよく話せるタイプ。AIアシスタントや学習の先生役、キャラクターとの会話向け

  • v1 Max:考えてから答えるタイプ。カスタマーサポートや、手順に沿って進める問い合わせ対応向け

公式が公開している数字は次のとおりです(独立した評価会社Artificial Analysisによる計測)。

項目

v1 Max

v1 Mini

話し始めるまでの時間(平均)

0.57秒

0.62秒

音声での推論問題の正解率(Big Bench Audio)

98.8%

75.9%

道具を使うタスクの成功率

87.1%

60.3%

割り込みや相槌への対応(Full-Duplex-Bench)

94.1%

95.8%

「音声での推論問題」は、音声で出された1,000問の問題(論理や数え上げなど)にどれだけ正しく答えられるかを測るものです。数字だけ見ると、考える力はMaxが大きく上、会話のテンポはMiniがわずかに上、という関係です。

90以上の言語に対応していて、ElevenLabsのライブラリにある1万7千以上の声を使えます。OpenAIのRealtime APIと同じ形式で呼び出せるAPIも用意されています。

出典:Introducing Eleven Realtime(ElevenLabs公式ブログ)、Eleven Realtime 製品ページ

試した方法:架空の通販サイトの電話サポートを作りました

ElevenLabsの「ElevenAgents」で新しいエージェントを作り、架空の通販サイト「ひだまりストア」のサポート担当「コウジ」として電話の問い合わせに答えてもらいました。

設定は次のとおりです。

  • ボイスモード:リアルタイム(ここでv1 Maxとv1 Miniを切り替え)

  • 声:Koji - Warm Japanese Business Narrator(日本語の落ち着いた男性の声)

  • 言語:日本語

ひとつ迷ったのが、モデルを選ぶ場所です。最初は「LLM(答えを考えるAI)」の一覧から探しましたが、そこには出てきません。エージェント画面の右側にある「ボイスモード」を「カスタム」から「リアルタイム」に切り替えると、その下にモデルの選択欄が出てきます。

コウジには、指示(システムプロンプト)で次の情報を渡しています。判断が必要な問い合わせを試すため、返品のルールと「今日の日付」も入れました。

  • 注文番号1234:電気ケトル。10月22日お届け予定、配送中

  • 注文番号5678:コーヒー豆 3袋。10月13日お届け済み

  • 注文番号9012:ワイヤレスイヤホン。まだ発送前

  • 返品ルール:お届けから7日以内で、未開封なら返品できる

  • 今日は10月21日として判断する

つまり、コーヒー豆は「お届けから8日目」なので、未開封でも返品できないのが正解です。ここでMaxとMiniの違いが出るかを見ました。

プロンプトはこれだけ。それでも会話が崩れなかった

今回コウジに渡した指示は、次の内容がほぼすべてです。


会話の例文や、「この質問にはこう答える」といった細かい決まりは入れていません。それでも、次のような電話対応らしい動きを自分でしていました。

  • 注文番号を聞いて、復唱してから答える

  • 「今日は10月21日」という情報から、「明日にはお届けできる予定です」と自分で付け加える

  • 「受けてない」と聞き間違えた言葉を、会話の流れから「開けていない」と受け取る

  • 返事をしないでいると「もしもし、お電話お繋がりでしょうか?」と声をかける

動画を見返しながら感じたのは、「これまで音声AIでは、指示で縛って縛って、やっと正しい会話になる感じだった。今回こんなに短い指示でここまで制御できているのに感動した」ということです。

もちろん、すべてが指示どおりだったわけではありません。「1〜2文で短く」と書いたのに、注文内容を伝える場面では3文になりました。返品の判断では、Maxでも一度言い間違えています。短い指示で形にはなりますが、実際に使うときは会話を何度か試して、気になる点を指示に足していく作業は必要です。

検証1:返事の速さは「1秒前後」。待たされる感じはなし

まずはMaxで、配送状況を問い合わせてみました。

自分:注文した商品がいつ届くか知りたいんですけど コウジ:ご注文番号をお伺いできますか?4桁の数字になります。 自分:1234です。 コウジ:電気ケトル、1台、9,800円、10月18日ご注文、10月22日のお届け予定で、現在配送中の状態となっております。明日にはお届けできる予定ですので、もう少々お待ちいただけますでしょうか。

内容はすべて正確でした。指示した「今日は10月21日」から、「明日にはお届けできる」と自分で付け加えている点も、電話対応らしい自然な返し方です。

実際に話してみた感想は「悪くないです。プロンプトから調べているにしては早い」でした。

ElevenLabsの管理画面には会話の記録が残り、話し終わってから声が出るまでの時間も確認できます。

場面

v1 Max

v1 Mini

最初の返事(注文番号を聞く・確認する)

4.0秒

3.5秒

2回目以降の返事

1.2〜1.8秒

0.7〜0.8秒

公式の0.57秒より長くなるのは、計り方が違うためです。実際の会話では、AIが「相手が話し終わったかどうか」を見極める待ち時間(今回は0.3〜1.3秒ほど)が加わります。また、MaxとMiniのどちらも、最初の1回だけ返事が遅くなる傾向がありました。

【画像④:返事の速さの比較(作成画像 speed.png)】

検証2:返品できるか?の判断で、MaxとMiniに差が出た

次に、判断が必要な問い合わせを試しました。「注文番号5678のコーヒー豆を返品したい。まだ開けていない」と伝えます。正解は「お届けから8日目なので、未開封でも返品できない」です。

v1 Max:一度言い間違えて、自分で訂正

コウジ:開封されていないとのことですね。お届けから7日以内であれば返品可能です。お手数ですが、返品手続きを進めさせていただきます。あ、失礼いたしました。こちらでお調べしたところ、10月13日にお届けとなっておりまして、本日で8日目となりますため、規定の7日を過ぎており返品をお受けすることができません。ご希望に添えず申し訳ございません。

最初は「返品可能です」と言いかけましたが、同じ返事の中で「あ、失礼いたしました」と言い直し、正しい答えにたどり着いています。人のオペレーターのような自然な訂正ですが、電話対応としては「一瞬でも誤った案内をした」ことになるので、良い点と注意点の両方があります。

また、こちらの「まだ開けてないです」は、音声認識の段階で「まだ受けてないです」と誤って文字になっていました。それでもMaxは会話の流れから「未開封」と正しく受け取っています。

【動画②:Maxの返品判断と言い直し(約1分)】

v1 Mini:「返品できます」と誤った案内

コウジ:お届け日は十月十三日でしたでしょうか。 自分:開封まだしてないんですけど。 コウジ:承知いたしました。お届けから七日以内で、未開封とのことですので、返品対応可能です。

Miniは、日付の計算をしないまま「返品できます」と答えてしまいました。また、自分が持っているお届け日を、お客さんに確認するようなちぐはぐな聞き方もしています。

【動画③:Miniの返品判断(約1分)】


v1 Max

v1 Mini

返品の判断

言い直して正解

誤った案内

考えてから答えたか(記録上)

あり

なし

公式が「手順やルールに沿う用途はMax」と案内しているとおりの結果でした。

【画像⑤:MaxとMiniの返品判断の比較(作成画像 judge.png)】

検証3:話の途中で割り込むと、すぐに止まって聞いてくれる

電話では、相手が話している途中で「あ、すみません」と口をはさむことがよくあります。この割り込みには、MaxもMiniもすぐに反応しました。

Maxの返品テストでは、こちらが「注文番号5678の…」と言葉を探して一瞬止まったところで、コウジが「はい、注文番号の五、六、七、八ですね。コーヒー豆200グラムを…」と話し始めました。こちらが「コーヒー豆を返品したいんですけど」と続けると、すぐに話をやめています。

記録の上では「AIが話し始めて、途中で止められた」という扱いです。ただ、実際に聞いた印象は違いました。止まるのが早いので、「はい」とだけ言って黙ったように聞こえ、相槌のように自然でした。

開封済みかどうかを聞いている途中で「すみません、まだ開けてないです」と答えたときも、質問の途中でぴたりと止まりました。

一方で、言い淀み(「えー」「…の」と言葉を探す間)への反応には違いがありました。Maxは0.2秒ほどの間で話し始めるので、考えながら話す人には少し食い気味に感じるかもしれません。Miniは、同じような言い淀みでも最後まで待ってから返事をしていました。

検証4:相槌では止まらない。ただし、あとで「返事」として拾ってしまう

公式では、Miniは「mm-hmm(うんうん)」のような相槌と、本当の割り込みを見分けられると説明されています。日本語の相槌でどうなるかを、Miniで2回試しました。

1回目:「あ、そうそう。うん。ん?」→ 止まった

コウジが「確認いたします。電…」と言いかけたところで相槌を打つと、話が完全に止まり、「はい、失礼しました。どうぞお話しください」と譲られてしまいました。肝心のお届け日は聞けないまま終わっています。

「そうそう」は何か話し始めたようにも聞こえ、最後の「ん?」は質問の声なので、割り込みと判断されても不思議ではありません。

【動画④:「そうそう」で止まった場面(約30秒)】

2回目:短い「はい」を2回 → 止まらずに最後まで話した

読み上げの途中で、短く「はい」と2回だけ相槌を打ちました。

コウジ:一二三四ですね。(はい)電気ケトル、1台、9,800円、10月18日注文、10月22日お届け予定、(はい)配送中となっております。

今度は止まらずに、最後まで話し続けました。ここは期待どおりです。

ところが、読み上げが終わったあと、コウジは「ご注文の商品は現在配送中で、10月22日にお届け予定となっております。何か他にお手伝いできることはありますか?」と、同じ内容をもう一度話し始めました。記録を見ると、読み上げ中の2回の「はい」が、話し終わったあとに「お客さんの返事」としてまとめて処理されていました。

つまり「相槌で話を止めない」はできていますが、「相槌を相槌として聞き流す」まではできていません。お客さんが相槌を打つたびに説明が繰り返されると、電話では少しくどく感じそうです。

なお、読み上げ中の相槌は、記録上は話し終わったあとの発言として残っていました。相槌の扱いを確かめるには、記録だけでなく録音や録画で確認するのが確実です。

【動画⑤:短い「はい」で止まらなかった場面と、その後の繰り返し(約1分)】

料金と、中身の仕組み

料金:AIの部分はMiniがMaxの約12分の1

料金は「1分あたりの通話料金」と「AIが読み書きした文字量(トークン)の料金」の合計です。同じ返品テストでの、管理画面に表示された金額は次のとおりでした。


v1 Max

v1 Mini

通話の長さ

79秒

59秒

AIの部分の料金

約0.025ドル

約0.002ドル

通話全体の料金

約0.13ドル

約0.08ドル

AIの部分だけ見るとMiniはMaxの約12分の1ですが、通話全体では1分あたりの料金が大部分を占めるので、差は2倍弱に縮まります。金額は検証時の表示で、プランや割引によって変わる可能性があります。

仕組み:中身は「耳・頭・口」の3段構成

会話の記録を見ると、Eleven Realtimeの中では次の3つが順番に動いていました。

  1. 耳:声を文字にする(Scribe v2 Realtime)

  2. 頭:答えを考える(Eleven Realtime v1 Max/v1 Mini)

  3. 口:答えを声にする(Eleven v4 Turbo)

公式ドキュメントでも「カスケード型(複数の部品を順番につなぐ形)」と説明されています。音声をそのまま音声で返す1つのモデルではなく、3つの部品をまとめて調整したもの、というのが正確な理解です。

口の部分には、以前の記事で試した「Eleven v4」の高速版が使われていました。v4の日本語の読み上げについては、Eleven v4の検証記事で詳しく紹介しています。

【画像⑥:耳・頭・口の3段構成の図(作成画像 structure.png)】

出典:Realtime models(ElevenLabsドキュメント)、OpenAI Realtime API compatibility

まとめ:ルールに沿う電話対応ならMax、気軽な会話ならMini

Eleven Realtimeのいちばんの強みは、短い指示だけで電話対応らしい会話が成り立つことでした。そのうえで、確かめたことをまとめます。

確かめたこと

結果

返事の速さ

実際の会話で1秒前後。最初の1回だけ3〜4秒かかる

判断力

Maxは言い直しながらも正解、Miniは誤った案内

割り込み

MaxもMiniもすぐに止まって聞いてくれる

相槌

短い「はい」では止まらないが、あとで返事として拾って説明を繰り返す

料金

AIの部分はMiniがMaxの約12分の1、通話全体では2倍弱の差

返品や予約のように、ルールに沿って正しく判断することが大切な電話対応では、Maxを選ぶのが安心です。一方で、案内係やキャラクターとの雑談のように、正確な判断よりテンポや料金を重視する使い方なら、Miniでも十分に使えそうです。

どちらを選ぶ場合も、相槌のあとに説明が繰り返される点や、Maxが一瞬だけ誤った案内をしてから訂正する点は、実際の運用前に確かめておきたいところです。

よくある質問

Eleven Realtimeとは何ですか?

ElevenLabsが2026年10月20日に発表した、音声エージェント用のモデルです。声の聞き取り、答えの生成、読み上げをまとめて調整していて、モデルを1つ選ぶだけで音声で会話するAIを作れます。v1 Miniとv1 Maxの2種類があります。

日本語でも使えますか?

使えます。今回の検証では、日本語の電話対応で注文番号の確認や返品の判断まで問題なく会話できました。音声認識が「注文番号」を「チーム番号」と聞き違える場面もありましたが、会話の流れから正しく受け取っていました。

v1 MaxとMiniはどちらを選べばいいですか?

ルールや手順に沿って判断する用途(カスタマーサポート、返品・予約の受付など)ならMaxがおすすめです。今回の返品テストでは、Maxだけが正しく判断できました。気軽な会話で料金を抑えたい場合はMiniが向いています。

どこで設定できますか?

ElevenLabsのElevenAgentsでエージェントを開き、「ボイスモード」を「リアルタイム」に切り替えると、モデル欄でv1 Miniとv1 Maxを選べます。LLMの一覧には表示されないので注意してください。

返事はどのくらい速いですか?

今回の検証では、2回目以降の返事が0.7〜1.8秒ほどでした。公式の0.57秒は「話し始めるまでの時間」の平均で、実際の会話では相手が話し終わったかを見極める時間が加わります。

プロンプトはどのくらい書けばいいですか?

今回は、注文データと返品ルールを含めて20行ほどの指示で、注文確認から返品の判断まで会話が成り立ちました。会話の例文や細かい分岐は書いていません。まずは役割・話し方・確認の流れ・判断に使う情報だけを書いて試し、気になった点を足していく進め方がおすすめです。

出典

結論:20行ほどのプロンプトだけで、電話対応が成り立った

ElevenLabsが2026年10月20日に発表した音声エージェント用のモデル「Eleven Realtime」を、架空の通販サイトの電話サポート役にして、日本語で試してみました。

いちばん驚いたのは、指示(プロンプト)の短さです。これまで音声AIを作るときは、「こう聞かれたらこう答える」「この順番で確認する」と細かく決めて、ようやく正しい会話になる、ということがよくありました。今回は、注文データと返品ルールを含めて20行ほどの指示を書いただけで、注文番号の確認、お届け日の案内、返品できるかの判断まで、電話らしい会話になりました。

上位版の「v1 Max」は、返品の判断で一度言い間違えながらも、自分で訂正して正しい答えにたどり着きました。下位版の「v1 Mini」は「返品できます」と誤った案内をしたので、ルールに沿って判断する電話対応ならMaxを選ぶのがおすすめです。

話の途中で割り込むと、どちらもすぐに話をやめて聞いてくれます。返事が来るまでの速さは、実際の会話で1秒前後でした。一方で、相槌をあとから「お客さんの返事」として受け取り、同じ説明を繰り返す惜しい場面もありました。

【動画①:Maxで配送状況を問い合わせた会話(約1分)】

Eleven Realtimeとは?

Eleven Realtimeは、AIと音声で会話する「音声エージェント」を作るためのモデルです。電話の自動応答や、Webサイトで話しかけられる案内係などを作るときに使います。

これまでのElevenLabsでは、声を文字にする「耳」、答えを考える「頭」、答えを声にする「口」を、それぞれ自分で選んで組み合わせる必要がありました。Eleven Realtimeでは、これらをElevenLabsがまとめて調整してくれるので、モデルを1つ選ぶだけで会話を始められます。

モデルは2種類あります。

  • v1 Mini:安く、テンポよく話せるタイプ。AIアシスタントや学習の先生役、キャラクターとの会話向け

  • v1 Max:考えてから答えるタイプ。カスタマーサポートや、手順に沿って進める問い合わせ対応向け

公式が公開している数字は次のとおりです(独立した評価会社Artificial Analysisによる計測)。

項目

v1 Max

v1 Mini

話し始めるまでの時間(平均)

0.57秒

0.62秒

音声での推論問題の正解率(Big Bench Audio)

98.8%

75.9%

道具を使うタスクの成功率

87.1%

60.3%

割り込みや相槌への対応(Full-Duplex-Bench)

94.1%

95.8%

「音声での推論問題」は、音声で出された1,000問の問題(論理や数え上げなど)にどれだけ正しく答えられるかを測るものです。数字だけ見ると、考える力はMaxが大きく上、会話のテンポはMiniがわずかに上、という関係です。

90以上の言語に対応していて、ElevenLabsのライブラリにある1万7千以上の声を使えます。OpenAIのRealtime APIと同じ形式で呼び出せるAPIも用意されています。

出典:Introducing Eleven Realtime(ElevenLabs公式ブログ)、Eleven Realtime 製品ページ

試した方法:架空の通販サイトの電話サポートを作りました

ElevenLabsの「ElevenAgents」で新しいエージェントを作り、架空の通販サイト「ひだまりストア」のサポート担当「コウジ」として電話の問い合わせに答えてもらいました。

設定は次のとおりです。

  • ボイスモード:リアルタイム(ここでv1 Maxとv1 Miniを切り替え)

  • 声:Koji - Warm Japanese Business Narrator(日本語の落ち着いた男性の声)

  • 言語:日本語

ひとつ迷ったのが、モデルを選ぶ場所です。最初は「LLM(答えを考えるAI)」の一覧から探しましたが、そこには出てきません。エージェント画面の右側にある「ボイスモード」を「カスタム」から「リアルタイム」に切り替えると、その下にモデルの選択欄が出てきます。

コウジには、指示(システムプロンプト)で次の情報を渡しています。判断が必要な問い合わせを試すため、返品のルールと「今日の日付」も入れました。

  • 注文番号1234:電気ケトル。10月22日お届け予定、配送中

  • 注文番号5678:コーヒー豆 3袋。10月13日お届け済み

  • 注文番号9012:ワイヤレスイヤホン。まだ発送前

  • 返品ルール:お届けから7日以内で、未開封なら返品できる

  • 今日は10月21日として判断する

つまり、コーヒー豆は「お届けから8日目」なので、未開封でも返品できないのが正解です。ここでMaxとMiniの違いが出るかを見ました。

プロンプトはこれだけ。それでも会話が崩れなかった

今回コウジに渡した指示は、次の内容がほぼすべてです。


会話の例文や、「この質問にはこう答える」といった細かい決まりは入れていません。それでも、次のような電話対応らしい動きを自分でしていました。

  • 注文番号を聞いて、復唱してから答える

  • 「今日は10月21日」という情報から、「明日にはお届けできる予定です」と自分で付け加える

  • 「受けてない」と聞き間違えた言葉を、会話の流れから「開けていない」と受け取る

  • 返事をしないでいると「もしもし、お電話お繋がりでしょうか?」と声をかける

動画を見返しながら感じたのは、「これまで音声AIでは、指示で縛って縛って、やっと正しい会話になる感じだった。今回こんなに短い指示でここまで制御できているのに感動した」ということです。

もちろん、すべてが指示どおりだったわけではありません。「1〜2文で短く」と書いたのに、注文内容を伝える場面では3文になりました。返品の判断では、Maxでも一度言い間違えています。短い指示で形にはなりますが、実際に使うときは会話を何度か試して、気になる点を指示に足していく作業は必要です。

検証1:返事の速さは「1秒前後」。待たされる感じはなし

まずはMaxで、配送状況を問い合わせてみました。

自分:注文した商品がいつ届くか知りたいんですけど コウジ:ご注文番号をお伺いできますか?4桁の数字になります。 自分:1234です。 コウジ:電気ケトル、1台、9,800円、10月18日ご注文、10月22日のお届け予定で、現在配送中の状態となっております。明日にはお届けできる予定ですので、もう少々お待ちいただけますでしょうか。

内容はすべて正確でした。指示した「今日は10月21日」から、「明日にはお届けできる」と自分で付け加えている点も、電話対応らしい自然な返し方です。

実際に話してみた感想は「悪くないです。プロンプトから調べているにしては早い」でした。

ElevenLabsの管理画面には会話の記録が残り、話し終わってから声が出るまでの時間も確認できます。

場面

v1 Max

v1 Mini

最初の返事(注文番号を聞く・確認する)

4.0秒

3.5秒

2回目以降の返事

1.2〜1.8秒

0.7〜0.8秒

公式の0.57秒より長くなるのは、計り方が違うためです。実際の会話では、AIが「相手が話し終わったかどうか」を見極める待ち時間(今回は0.3〜1.3秒ほど)が加わります。また、MaxとMiniのどちらも、最初の1回だけ返事が遅くなる傾向がありました。

【画像④:返事の速さの比較(作成画像 speed.png)】

検証2:返品できるか?の判断で、MaxとMiniに差が出た

次に、判断が必要な問い合わせを試しました。「注文番号5678のコーヒー豆を返品したい。まだ開けていない」と伝えます。正解は「お届けから8日目なので、未開封でも返品できない」です。

v1 Max:一度言い間違えて、自分で訂正

コウジ:開封されていないとのことですね。お届けから7日以内であれば返品可能です。お手数ですが、返品手続きを進めさせていただきます。あ、失礼いたしました。こちらでお調べしたところ、10月13日にお届けとなっておりまして、本日で8日目となりますため、規定の7日を過ぎており返品をお受けすることができません。ご希望に添えず申し訳ございません。

最初は「返品可能です」と言いかけましたが、同じ返事の中で「あ、失礼いたしました」と言い直し、正しい答えにたどり着いています。人のオペレーターのような自然な訂正ですが、電話対応としては「一瞬でも誤った案内をした」ことになるので、良い点と注意点の両方があります。

また、こちらの「まだ開けてないです」は、音声認識の段階で「まだ受けてないです」と誤って文字になっていました。それでもMaxは会話の流れから「未開封」と正しく受け取っています。

【動画②:Maxの返品判断と言い直し(約1分)】

v1 Mini:「返品できます」と誤った案内

コウジ:お届け日は十月十三日でしたでしょうか。 自分:開封まだしてないんですけど。 コウジ:承知いたしました。お届けから七日以内で、未開封とのことですので、返品対応可能です。

Miniは、日付の計算をしないまま「返品できます」と答えてしまいました。また、自分が持っているお届け日を、お客さんに確認するようなちぐはぐな聞き方もしています。

【動画③:Miniの返品判断(約1分)】


v1 Max

v1 Mini

返品の判断

言い直して正解

誤った案内

考えてから答えたか(記録上)

あり

なし

公式が「手順やルールに沿う用途はMax」と案内しているとおりの結果でした。

【画像⑤:MaxとMiniの返品判断の比較(作成画像 judge.png)】

検証3:話の途中で割り込むと、すぐに止まって聞いてくれる

電話では、相手が話している途中で「あ、すみません」と口をはさむことがよくあります。この割り込みには、MaxもMiniもすぐに反応しました。

Maxの返品テストでは、こちらが「注文番号5678の…」と言葉を探して一瞬止まったところで、コウジが「はい、注文番号の五、六、七、八ですね。コーヒー豆200グラムを…」と話し始めました。こちらが「コーヒー豆を返品したいんですけど」と続けると、すぐに話をやめています。

記録の上では「AIが話し始めて、途中で止められた」という扱いです。ただ、実際に聞いた印象は違いました。止まるのが早いので、「はい」とだけ言って黙ったように聞こえ、相槌のように自然でした。

開封済みかどうかを聞いている途中で「すみません、まだ開けてないです」と答えたときも、質問の途中でぴたりと止まりました。

一方で、言い淀み(「えー」「…の」と言葉を探す間)への反応には違いがありました。Maxは0.2秒ほどの間で話し始めるので、考えながら話す人には少し食い気味に感じるかもしれません。Miniは、同じような言い淀みでも最後まで待ってから返事をしていました。

検証4:相槌では止まらない。ただし、あとで「返事」として拾ってしまう

公式では、Miniは「mm-hmm(うんうん)」のような相槌と、本当の割り込みを見分けられると説明されています。日本語の相槌でどうなるかを、Miniで2回試しました。

1回目:「あ、そうそう。うん。ん?」→ 止まった

コウジが「確認いたします。電…」と言いかけたところで相槌を打つと、話が完全に止まり、「はい、失礼しました。どうぞお話しください」と譲られてしまいました。肝心のお届け日は聞けないまま終わっています。

「そうそう」は何か話し始めたようにも聞こえ、最後の「ん?」は質問の声なので、割り込みと判断されても不思議ではありません。

【動画④:「そうそう」で止まった場面(約30秒)】

2回目:短い「はい」を2回 → 止まらずに最後まで話した

読み上げの途中で、短く「はい」と2回だけ相槌を打ちました。

コウジ:一二三四ですね。(はい)電気ケトル、1台、9,800円、10月18日注文、10月22日お届け予定、(はい)配送中となっております。

今度は止まらずに、最後まで話し続けました。ここは期待どおりです。

ところが、読み上げが終わったあと、コウジは「ご注文の商品は現在配送中で、10月22日にお届け予定となっております。何か他にお手伝いできることはありますか?」と、同じ内容をもう一度話し始めました。記録を見ると、読み上げ中の2回の「はい」が、話し終わったあとに「お客さんの返事」としてまとめて処理されていました。

つまり「相槌で話を止めない」はできていますが、「相槌を相槌として聞き流す」まではできていません。お客さんが相槌を打つたびに説明が繰り返されると、電話では少しくどく感じそうです。

なお、読み上げ中の相槌は、記録上は話し終わったあとの発言として残っていました。相槌の扱いを確かめるには、記録だけでなく録音や録画で確認するのが確実です。

【動画⑤:短い「はい」で止まらなかった場面と、その後の繰り返し(約1分)】

料金と、中身の仕組み

料金:AIの部分はMiniがMaxの約12分の1

料金は「1分あたりの通話料金」と「AIが読み書きした文字量(トークン)の料金」の合計です。同じ返品テストでの、管理画面に表示された金額は次のとおりでした。


v1 Max

v1 Mini

通話の長さ

79秒

59秒

AIの部分の料金

約0.025ドル

約0.002ドル

通話全体の料金

約0.13ドル

約0.08ドル

AIの部分だけ見るとMiniはMaxの約12分の1ですが、通話全体では1分あたりの料金が大部分を占めるので、差は2倍弱に縮まります。金額は検証時の表示で、プランや割引によって変わる可能性があります。

仕組み:中身は「耳・頭・口」の3段構成

会話の記録を見ると、Eleven Realtimeの中では次の3つが順番に動いていました。

  1. 耳:声を文字にする(Scribe v2 Realtime)

  2. 頭:答えを考える(Eleven Realtime v1 Max/v1 Mini)

  3. 口:答えを声にする(Eleven v4 Turbo)

公式ドキュメントでも「カスケード型(複数の部品を順番につなぐ形)」と説明されています。音声をそのまま音声で返す1つのモデルではなく、3つの部品をまとめて調整したもの、というのが正確な理解です。

口の部分には、以前の記事で試した「Eleven v4」の高速版が使われていました。v4の日本語の読み上げについては、Eleven v4の検証記事で詳しく紹介しています。

【画像⑥:耳・頭・口の3段構成の図(作成画像 structure.png)】

出典:Realtime models(ElevenLabsドキュメント)、OpenAI Realtime API compatibility

まとめ:ルールに沿う電話対応ならMax、気軽な会話ならMini

Eleven Realtimeのいちばんの強みは、短い指示だけで電話対応らしい会話が成り立つことでした。そのうえで、確かめたことをまとめます。

確かめたこと

結果

返事の速さ

実際の会話で1秒前後。最初の1回だけ3〜4秒かかる

判断力

Maxは言い直しながらも正解、Miniは誤った案内

割り込み

MaxもMiniもすぐに止まって聞いてくれる

相槌

短い「はい」では止まらないが、あとで返事として拾って説明を繰り返す

料金

AIの部分はMiniがMaxの約12分の1、通話全体では2倍弱の差

返品や予約のように、ルールに沿って正しく判断することが大切な電話対応では、Maxを選ぶのが安心です。一方で、案内係やキャラクターとの雑談のように、正確な判断よりテンポや料金を重視する使い方なら、Miniでも十分に使えそうです。

どちらを選ぶ場合も、相槌のあとに説明が繰り返される点や、Maxが一瞬だけ誤った案内をしてから訂正する点は、実際の運用前に確かめておきたいところです。

よくある質問

Eleven Realtimeとは何ですか?

ElevenLabsが2026年10月20日に発表した、音声エージェント用のモデルです。声の聞き取り、答えの生成、読み上げをまとめて調整していて、モデルを1つ選ぶだけで音声で会話するAIを作れます。v1 Miniとv1 Maxの2種類があります。

日本語でも使えますか?

使えます。今回の検証では、日本語の電話対応で注文番号の確認や返品の判断まで問題なく会話できました。音声認識が「注文番号」を「チーム番号」と聞き違える場面もありましたが、会話の流れから正しく受け取っていました。

v1 MaxとMiniはどちらを選べばいいですか?

ルールや手順に沿って判断する用途(カスタマーサポート、返品・予約の受付など)ならMaxがおすすめです。今回の返品テストでは、Maxだけが正しく判断できました。気軽な会話で料金を抑えたい場合はMiniが向いています。

どこで設定できますか?

ElevenLabsのElevenAgentsでエージェントを開き、「ボイスモード」を「リアルタイム」に切り替えると、モデル欄でv1 Miniとv1 Maxを選べます。LLMの一覧には表示されないので注意してください。

返事はどのくらい速いですか?

今回の検証では、2回目以降の返事が0.7〜1.8秒ほどでした。公式の0.57秒は「話し始めるまでの時間」の平均で、実際の会話では相手が話し終わったかを見極める時間が加わります。

プロンプトはどのくらい書けばいいですか?

今回は、注文データと返品ルールを含めて20行ほどの指示で、注文確認から返品の判断まで会話が成り立ちました。会話の例文や細かい分岐は書いていません。まずは役割・話し方・確認の流れ・判断に使う情報だけを書いて試し、気になった点を足していく進め方がおすすめです。

出典

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