OpenAIの「Decisions API」を試してみた|速いだけじゃない、AIの“迷い”を数字で返す判断特化API
OpenAIの「Decisions API」を試してみた|速いだけじゃない、AIの“迷い”を数字で返す判断特化API


結論:速さよりも「迷いを数字で返す」ところが本領でした
OpenAIが2026年10月に公開した「Decisions API」を実際に触ってみました。ひとことで言うと、文章を書かず、決められた選択肢から答えを選んで「どれくらい自信があるか」を数字で返してくれるAIです。
試して分かったことは次のとおりです。
速い:問い合わせ文の振り分けは約0.2秒。同じモデルを通常のチャットで使うときに比べて、5〜7倍速い結果でした。
迷いが見える:「請求の話が90%、配送の話が10%」のように確率で返ってくるので、自信がないものだけ人が確認する、という使い方ができます。
ルールを文章で教えられる:学習データを用意しなくても、指示文に1行足すだけで判定が変わりました。
安い:今回の検証10回分(画像6枚を含む)の料金は、合計で約0.5円でした。
苦手なこともある:写真に写った車を数えさせると、7台を「3台」と答えました。ただし「自信は27%」と、正直に低い数字を出していました。
「生成AIより10倍速い」と紹介されることが多いAPIですが、実際に使ってみると、速さよりも「答えの形が決まっていて、自信の度合いまで分かる」ところに便利さがありました。ここからは、実際に試した画面を交えて順番に紹介します。
Decisions APIとは?
Decisions APIは、OpenAIが2026年9月の開発者向けイベント「DevDay」で発表し、10月6日にすべての開発者向けにベータ公開した新しいAPIです。中身のモデルは、GPT-6シリーズの中でいちばん軽量な「GPT-6 Luna」です。
ChatGPTのような普通のAIは、質問すると文章で答えを返します。一方、Decisions APIは文章を書きません。こちらが用意した選択肢の中から答えを選び、それぞれの確率を数字で返してくれます。
質問の形は次の3種類です。
種類 | できること | 返ってくるもの |
|---|---|---|
述語(predicate) | 「この写真に修理が必要な傷がある」など、文が正しいかを判定する | 正しい確率(0〜100%) |
選択(choice) | 問い合わせを担当部署に振り分けるなど、選択肢から1つ選ぶ | 選んだ答え、各選択肢の確率、自信度 |
スコア(score) | 緊急度を「低・中・高」で評価するなど、段階で評価する | 段階の平均値(例:1.89)、各段階の確率 |
入力には文章だけでなく画像も使えます。料金は入力100万トークンあたり0.10ドルで、AIが返す側(出力)には料金がかかりません。
OpenAIは「通常のAPI(Responses API)より約10倍速い」と説明しています。この数字が本当かどうかも、あとで実際に測ってみました。
ブラウザだけで試せる「Playground」で使ってみた
Decisions APIには専用のPlayground(お試し画面)があり、プログラムを書かなくてもブラウザだけで試せます。OpenAIのAPIアカウントでログインして、platform.openai.com/decisions を開くだけです。
画面の左側で「何を聞くか(プロンプト)」と「質問の種類」「選択肢」を決め、下の入力欄に判定したい文章や画像を入れて実行する仕組みです。テンプレートも用意されていますが、今回は手順を覚えるために、すべて一から設定しました。

問い合わせを担当部署に振り分ける
まずはいちばん基本的な使い方として、お客さまからの問い合わせを「請求・返金」「技術サポート」「配送」「その他」の4つに振り分けてみました。
「注文したのに2回請求されています」と入力すると、答えは「請求・返金」で自信度は100%でした。かかった時間は、サーバー側の処理が152ミリ秒(0.15秒)、通信を含めても約0.2秒です。日本語も問題なく理解しています。

判断が割れる問い合わせだとどうなる?
次は、人が読んでも少し迷う問い合わせです。「届いた商品が壊れていたので返金してほしいです」は、配送の話とも返金の話とも取れます。
結果は「請求・返金 90%、配送 10%」で、自信度は87%に下がりました。「返金してほしい」という言葉に引っ張られつつも、配送の可能性を1割残しています。
この「迷いが数字で見える」ところが、Decisions APIのいちばんの特徴だと感じました。たとえば「自信度が90%以上なら自動で振り分け、それより低ければ人が確認する」といった使い方ができます。

社内ルールを1行足すだけで判定が変わる
会社によっては、「商品の破損は配送担当が対応する」といった独自のルールがあるはずです。そこで、プロンプトに次の1文を足してみました。
なお、商品の破損や配送中のトラブルに関する問い合わせは、返金の要望が含まれていても「配送」が担当します。
すると、さっきまで「請求・返金 90%」だった判定が「配送 100%」に切り替わりました。学習データを集めたり、AIを作り直したりする必要はありません。処理時間も153ミリ秒と変わらずです。
ただし、ルールを与えると迷いがなくなり、100%に振り切れました。ルールの書き方ひとつで結果が大きく動くので、本番で使う前には、いろいろな文章で確認しておくと安心です。

緊急度を「低・中・高」で評価する
種類を「スコア」に切り替えて、問い合わせの緊急度を段階で評価させました。段階は次の3つです。
低:急ぎではない質問や要望
中:困っているが、回避策がある
高:業務が止まっていて、回避策がない
「ログインできません。今日中に請求書を出さないといけないので困っています」と入力すると、スコアは2段階中の1.89でした。内訳は「高 90%、中 9%、低 1%」です。
スコアは各段階の確率を重みにした平均値で、計算すると 0×0.01+1×0.09+2×0.90=1.89 とぴったり合います。「高」に近いけれど少しだけ「中」の可能性もある、という細かいニュアンスが数字に表れています。

画像も判定できる
入力欄の「+」から画像を追加すれば、写真についても判定できます。青空と木が写った写真を入れて、「述語」で試しました。
「この写真には植物が写っている」→ 100%(正しい)
「この写真は夜に撮影された」→ 0%(正しくない)
どちらも正しく判定できています。ただし、画像を入れると処理時間はサーバー側で352〜591ミリ秒に伸びました。文章のとき(約150ミリ秒)の2〜4倍です。



続いて、駐車場を撮ったスマホ写真でも試しました。写真のほとんどは空と駐車場で、飲食店は奥に小さく看板が見えるだけです。

「この写真には飲食店が写っている」は98%で、小さな看板もきちんと拾っていました。ただし、この写真はサーバー側の処理が1,659ミリ秒(約1.7秒)かかりました。スマホで撮った大きな画像ほど、時間がかかるようです。

看板の文字を読めるかも試しましたが、答えは100%でした。とはいえ、画像の文字を読むのは今のAIならできて当然のことなので、ここは驚くところではありません。筆者も試しながら「そりゃ読めるでしょ、Claudeも読めるんやし」と思いました。
苦手なこと:写真に写った車を数える
そこで、もう少し難しい「数える」問題を出してみました。Decisions APIは数字を自由に答えられないので、「0台・1台・2台・3台・4台以上」を選択肢にして「選択」で聞きます。
結果は「3台 42%、4台以上 39%、2台 18%」で、一番の答えは「3台」でした。ところが、写真を拡大して数え直すと、実際は7台写っていました。筆者も「アップしないと分からんかった」ほどで、奥の車は人の目でも拡大しないと気づきません。

そこで、車が集まっている部分だけを切り出して、もう一度試しました。この範囲には4台ありますが、フェンス越しで画像もぼやけているので、正直「ちょっと意地悪すぎるかも」という問題です。

結果は「1台 40%、2台 40%」で、「4台以上」は5%しかありませんでした。はっきり見える2台までは数えていて、フェンス越しのぼやけた車は車と判断しなかったようです。これは「しょうがない」というのが筆者の感想です。

とはいえ、注目したいのは自信度です。どちらも27%、25%と今回の検証でいちばん低い数字でした。「間違っているのに自信満々」といういちばん困る状態にはなっていません。自信度を見て「これは人が確認するべき」と判断できるので、苦手な問題でも使い方次第です。
ちなみに、切り出して画像を小さくしただけで、処理時間は1,607ミリ秒から715ミリ秒と半分以下になりました。画像を渡すときは、必要な部分だけを切り出すと速くなります。
「10倍速い」は本当?通常のチャットと比べてみた
OpenAIは「通常のAPIより最大10倍速い」と説明しています。そこで、同じGPT-6 Lunaに通常のチャット画面から同じ問い合わせを分類させて、時間を比べました。
最初は初期設定のまま試したところ、答えが出るまで8.5秒かかりました。初期設定では、答える前に考える処理(推論)が入っているためです。

これではDecisions APIに有利すぎるので、推論をオフ(none)にしてもう一度試しました。すると、1.1秒まで短くなりました。


公平な条件(推論なし)で比べると、Decisions APIは約5〜7倍速い結果でした。公称の「最大10倍」には少し届きませんが、「最大」という言い方なので、大きく外れてはいません。
速さ以外の違いもはっきりしました。
チャットは「請求・返金」という文字しか返さない:「配送の可能性も1割ある」という迷いは見えません。
チャットは答え方がぶれることがある:今回は素直に答えましたが、「請求・返金だと思います」のように文章で返されると、システム側で読み取る工夫が必要になります。Decisions APIは必ず選択肢のどれかを返します。
プログラムから直接呼んでみた
Playgroundには入力欄がないものの、APIでは使える機能が2つあります。ターミナルから直接呼び出して試しました。
複数の質問を1回でまとめて聞ける
選択肢ごとに「どんなときに選ぶか」の説明を付けられる
「届いた商品が壊れていたので返金してほしいです」について、「担当部署」と「緊急度」を一度に聞きました。さらに、配送の選択肢には「配送・追跡、配送中の破損」という説明を付けています。

担当部署は「請求・返金 76%、配送 23%」、緊急度は「中」が71%でした。選択肢の説明が入ったことで、配送の確率が10%から23%に上がっています。
条件 | 請求・返金 | 配送 |
|---|---|---|
何も付けない | 90% | 10% |
選択肢に説明を付ける | 76% | 23% |
プロンプトにルールを書く | 0% | 100% |
選択肢の説明は「ヒント」程度に効き、プロンプトに書いたルールは「命令」として強く効く、という違いが見えました。確実に振り分けたいルールは、プロンプト側に書くのがよさそうです。
速度については、同じコマンドを3回連続で実行すると、2.37秒 → 1.03秒 → 0.25秒と下がっていきました。最初の1、2回だけは、接続の準備などに時間がかかるようです。落ち着いたあとは、質問を2つにしても0.25秒と、質問1つのとき(約0.2秒)とほとんど変わりません。質問を別々に送るより、まとめて聞くほうが効率的です。
また、3回とも確率は小数点以下まで完全に同じでした。Playgroundでも、約1時間あけて同じ質問をしたところ「請求・返金 90%、配送 10%」と同じ結果が返ってきました。「さっきと判定が違う」ということが起きにくいのは、業務で使ううえで安心できるポイントです。
料金:検証10回で約0.5円
OpenAIの管理画面の「使用量(Usage)」では、Decisions APIの利用分が別枠で表示されていました。Playgroundで試した10回分は、入力が合計35,284トークン、出力は0トークンでした。

料金に換算すると約0.0035ドルで、1ドル150円で計算すると約0.5円です。
使い方 | 1回あたりの目安 |
|---|---|
文章だけ(質問2つ、336トークン) | 約0.005円 |
画像1枚(平均約6,000トークン) | 約0.1円 |
画像の方がトークンを多く使いますが、それでも1回0.1円程度です。文章の判定であれば、1万件処理しても数十円という計算になります。
使う前に知っておきたい注意点
ベータ版ならではの気になる点もいくつかありました。
ログ画面に残らない:通常のチャットは「ログ」画面で履歴を確認できますが、Decisions APIのリクエストは表示されませんでした。「どう判定したか」をあとから追いたい場合は、自分のシステム側で記録しておく必要があります。
使用量の合計欄に含まれない:使用量画面の「合計トークン数」「合計リクエスト数」には、Decisions APIの分が入っていませんでした。合計欄だけを見ていると利用量を見落とします。
画像は遅くなる:文章は0.15〜0.25秒ですが、画像は0.7〜2秒ほどかかりました。「10倍速い」は文章を判定するときの話だと考えたほうがよさそうです。
Chromeの翻訳機能を使うと表示がずれる:Playgroundは英語の画面です。Chromeで日本語に翻訳して使っていたところ、質問の種類を「選択」に切り替えても表示が「述語」のままでした。中身は切り替わっていて、英語表示に戻すと正しく「Choice」と出ます。

どんな場面で役立ちそうか
今回の検証から、Decisions APIが向いているのは「答えの候補が決まっていて、数が多い判断」だと感じました。
お問い合わせやメールの担当部署への振り分け
問い合わせの緊急度の判定(急ぎのものを先に対応する)
商品写真の傷や破損のチェック
AIエージェントが次に使うツールを選ぶ場面
反対に、写真の中の細かいものを数えるような作業は苦手です。その場合も、自信度が低いものだけを人が確認する、という組み合わせ方なら使いどころがありそうです。
よくある質問
Q. Decisions APIは無料で使えますか?
A. 無料ではありませんが、とても安価です。入力100万トークンあたり0.10ドルで、出力には料金がかかりません。今回の検証では、10回試して約0.5円でした。
Q. プログラミングができなくても試せますか?
A. 試せます。OpenAIのAPIアカウントがあれば、Playgroundでブラウザから試せます。ただし、選択肢ごとの説明や、複数の質問をまとめて聞く機能はAPIでしか使えません。
Q. ChatGPTに選択肢を示して選ばせるのと何が違うのですか?
A. 大きく3つ違います。速さ(推論なしのチャットの5〜7倍)、各選択肢の確率と自信度が数字で返ってくること、必ず選択肢のどれかで答えることです。
Q. 日本語に対応していますか?
A. 対応しています。今回はプロンプトも選択肢も入力文もすべて日本語で試しましたが、問題なく判定できました。画面は英語です。
Q. 同じ質問をすると、毎回同じ答えが返ってきますか?
A. 今回の検証では、同じ入力に対して確率まで完全に同じ結果が返ってきました。約1時間あけて試した場合も同じでした。
まとめ
Decisions APIは「速いAI」として紹介されることが多いですが、実際に使ってみると、いちばん便利なのは「AIの迷いが数字で見えること」でした。
文章の判定は0.15〜0.25秒で、通常のチャット(推論なし)の5〜7倍速い
確率と自信度が返ってくるので、「自信がないものだけ人が見る」仕組みを作りやすい
プロンプトにルールを書くだけで、判定を社内ルールに合わせられる
料金はとても安く、結果も毎回同じ
写真の中の細かいものを数えるのは苦手。ただし、そのときは自信度も低くなる
お問い合わせの振り分けのように、毎日たくさん発生する「小さな判断」を自動化したい場合には、試してみる価値のあるAPIです。現在はベータ版で、数週間のうちに正式公開される予定です。
※ 本記事の内容は2026年10月13日時点のものです。速度は筆者の環境(日本からのアクセス)での実測値です。
結論:速さよりも「迷いを数字で返す」ところが本領でした
OpenAIが2026年10月に公開した「Decisions API」を実際に触ってみました。ひとことで言うと、文章を書かず、決められた選択肢から答えを選んで「どれくらい自信があるか」を数字で返してくれるAIです。
試して分かったことは次のとおりです。
速い:問い合わせ文の振り分けは約0.2秒。同じモデルを通常のチャットで使うときに比べて、5〜7倍速い結果でした。
迷いが見える:「請求の話が90%、配送の話が10%」のように確率で返ってくるので、自信がないものだけ人が確認する、という使い方ができます。
ルールを文章で教えられる:学習データを用意しなくても、指示文に1行足すだけで判定が変わりました。
安い:今回の検証10回分(画像6枚を含む)の料金は、合計で約0.5円でした。
苦手なこともある:写真に写った車を数えさせると、7台を「3台」と答えました。ただし「自信は27%」と、正直に低い数字を出していました。
「生成AIより10倍速い」と紹介されることが多いAPIですが、実際に使ってみると、速さよりも「答えの形が決まっていて、自信の度合いまで分かる」ところに便利さがありました。ここからは、実際に試した画面を交えて順番に紹介します。
Decisions APIとは?
Decisions APIは、OpenAIが2026年9月の開発者向けイベント「DevDay」で発表し、10月6日にすべての開発者向けにベータ公開した新しいAPIです。中身のモデルは、GPT-6シリーズの中でいちばん軽量な「GPT-6 Luna」です。
ChatGPTのような普通のAIは、質問すると文章で答えを返します。一方、Decisions APIは文章を書きません。こちらが用意した選択肢の中から答えを選び、それぞれの確率を数字で返してくれます。
質問の形は次の3種類です。
種類 | できること | 返ってくるもの |
|---|---|---|
述語(predicate) | 「この写真に修理が必要な傷がある」など、文が正しいかを判定する | 正しい確率(0〜100%) |
選択(choice) | 問い合わせを担当部署に振り分けるなど、選択肢から1つ選ぶ | 選んだ答え、各選択肢の確率、自信度 |
スコア(score) | 緊急度を「低・中・高」で評価するなど、段階で評価する | 段階の平均値(例:1.89)、各段階の確率 |
入力には文章だけでなく画像も使えます。料金は入力100万トークンあたり0.10ドルで、AIが返す側(出力)には料金がかかりません。
OpenAIは「通常のAPI(Responses API)より約10倍速い」と説明しています。この数字が本当かどうかも、あとで実際に測ってみました。
ブラウザだけで試せる「Playground」で使ってみた
Decisions APIには専用のPlayground(お試し画面)があり、プログラムを書かなくてもブラウザだけで試せます。OpenAIのAPIアカウントでログインして、platform.openai.com/decisions を開くだけです。
画面の左側で「何を聞くか(プロンプト)」と「質問の種類」「選択肢」を決め、下の入力欄に判定したい文章や画像を入れて実行する仕組みです。テンプレートも用意されていますが、今回は手順を覚えるために、すべて一から設定しました。

問い合わせを担当部署に振り分ける
まずはいちばん基本的な使い方として、お客さまからの問い合わせを「請求・返金」「技術サポート」「配送」「その他」の4つに振り分けてみました。
「注文したのに2回請求されています」と入力すると、答えは「請求・返金」で自信度は100%でした。かかった時間は、サーバー側の処理が152ミリ秒(0.15秒)、通信を含めても約0.2秒です。日本語も問題なく理解しています。

判断が割れる問い合わせだとどうなる?
次は、人が読んでも少し迷う問い合わせです。「届いた商品が壊れていたので返金してほしいです」は、配送の話とも返金の話とも取れます。
結果は「請求・返金 90%、配送 10%」で、自信度は87%に下がりました。「返金してほしい」という言葉に引っ張られつつも、配送の可能性を1割残しています。
この「迷いが数字で見える」ところが、Decisions APIのいちばんの特徴だと感じました。たとえば「自信度が90%以上なら自動で振り分け、それより低ければ人が確認する」といった使い方ができます。

社内ルールを1行足すだけで判定が変わる
会社によっては、「商品の破損は配送担当が対応する」といった独自のルールがあるはずです。そこで、プロンプトに次の1文を足してみました。
なお、商品の破損や配送中のトラブルに関する問い合わせは、返金の要望が含まれていても「配送」が担当します。
すると、さっきまで「請求・返金 90%」だった判定が「配送 100%」に切り替わりました。学習データを集めたり、AIを作り直したりする必要はありません。処理時間も153ミリ秒と変わらずです。
ただし、ルールを与えると迷いがなくなり、100%に振り切れました。ルールの書き方ひとつで結果が大きく動くので、本番で使う前には、いろいろな文章で確認しておくと安心です。

緊急度を「低・中・高」で評価する
種類を「スコア」に切り替えて、問い合わせの緊急度を段階で評価させました。段階は次の3つです。
低:急ぎではない質問や要望
中:困っているが、回避策がある
高:業務が止まっていて、回避策がない
「ログインできません。今日中に請求書を出さないといけないので困っています」と入力すると、スコアは2段階中の1.89でした。内訳は「高 90%、中 9%、低 1%」です。
スコアは各段階の確率を重みにした平均値で、計算すると 0×0.01+1×0.09+2×0.90=1.89 とぴったり合います。「高」に近いけれど少しだけ「中」の可能性もある、という細かいニュアンスが数字に表れています。

画像も判定できる
入力欄の「+」から画像を追加すれば、写真についても判定できます。青空と木が写った写真を入れて、「述語」で試しました。
「この写真には植物が写っている」→ 100%(正しい)
「この写真は夜に撮影された」→ 0%(正しくない)
どちらも正しく判定できています。ただし、画像を入れると処理時間はサーバー側で352〜591ミリ秒に伸びました。文章のとき(約150ミリ秒)の2〜4倍です。



続いて、駐車場を撮ったスマホ写真でも試しました。写真のほとんどは空と駐車場で、飲食店は奥に小さく看板が見えるだけです。

「この写真には飲食店が写っている」は98%で、小さな看板もきちんと拾っていました。ただし、この写真はサーバー側の処理が1,659ミリ秒(約1.7秒)かかりました。スマホで撮った大きな画像ほど、時間がかかるようです。

看板の文字を読めるかも試しましたが、答えは100%でした。とはいえ、画像の文字を読むのは今のAIならできて当然のことなので、ここは驚くところではありません。筆者も試しながら「そりゃ読めるでしょ、Claudeも読めるんやし」と思いました。
苦手なこと:写真に写った車を数える
そこで、もう少し難しい「数える」問題を出してみました。Decisions APIは数字を自由に答えられないので、「0台・1台・2台・3台・4台以上」を選択肢にして「選択」で聞きます。
結果は「3台 42%、4台以上 39%、2台 18%」で、一番の答えは「3台」でした。ところが、写真を拡大して数え直すと、実際は7台写っていました。筆者も「アップしないと分からんかった」ほどで、奥の車は人の目でも拡大しないと気づきません。

そこで、車が集まっている部分だけを切り出して、もう一度試しました。この範囲には4台ありますが、フェンス越しで画像もぼやけているので、正直「ちょっと意地悪すぎるかも」という問題です。

結果は「1台 40%、2台 40%」で、「4台以上」は5%しかありませんでした。はっきり見える2台までは数えていて、フェンス越しのぼやけた車は車と判断しなかったようです。これは「しょうがない」というのが筆者の感想です。

とはいえ、注目したいのは自信度です。どちらも27%、25%と今回の検証でいちばん低い数字でした。「間違っているのに自信満々」といういちばん困る状態にはなっていません。自信度を見て「これは人が確認するべき」と判断できるので、苦手な問題でも使い方次第です。
ちなみに、切り出して画像を小さくしただけで、処理時間は1,607ミリ秒から715ミリ秒と半分以下になりました。画像を渡すときは、必要な部分だけを切り出すと速くなります。
「10倍速い」は本当?通常のチャットと比べてみた
OpenAIは「通常のAPIより最大10倍速い」と説明しています。そこで、同じGPT-6 Lunaに通常のチャット画面から同じ問い合わせを分類させて、時間を比べました。
最初は初期設定のまま試したところ、答えが出るまで8.5秒かかりました。初期設定では、答える前に考える処理(推論)が入っているためです。

これではDecisions APIに有利すぎるので、推論をオフ(none)にしてもう一度試しました。すると、1.1秒まで短くなりました。


公平な条件(推論なし)で比べると、Decisions APIは約5〜7倍速い結果でした。公称の「最大10倍」には少し届きませんが、「最大」という言い方なので、大きく外れてはいません。
速さ以外の違いもはっきりしました。
チャットは「請求・返金」という文字しか返さない:「配送の可能性も1割ある」という迷いは見えません。
チャットは答え方がぶれることがある:今回は素直に答えましたが、「請求・返金だと思います」のように文章で返されると、システム側で読み取る工夫が必要になります。Decisions APIは必ず選択肢のどれかを返します。
プログラムから直接呼んでみた
Playgroundには入力欄がないものの、APIでは使える機能が2つあります。ターミナルから直接呼び出して試しました。
複数の質問を1回でまとめて聞ける
選択肢ごとに「どんなときに選ぶか」の説明を付けられる
「届いた商品が壊れていたので返金してほしいです」について、「担当部署」と「緊急度」を一度に聞きました。さらに、配送の選択肢には「配送・追跡、配送中の破損」という説明を付けています。

担当部署は「請求・返金 76%、配送 23%」、緊急度は「中」が71%でした。選択肢の説明が入ったことで、配送の確率が10%から23%に上がっています。
条件 | 請求・返金 | 配送 |
|---|---|---|
何も付けない | 90% | 10% |
選択肢に説明を付ける | 76% | 23% |
プロンプトにルールを書く | 0% | 100% |
選択肢の説明は「ヒント」程度に効き、プロンプトに書いたルールは「命令」として強く効く、という違いが見えました。確実に振り分けたいルールは、プロンプト側に書くのがよさそうです。
速度については、同じコマンドを3回連続で実行すると、2.37秒 → 1.03秒 → 0.25秒と下がっていきました。最初の1、2回だけは、接続の準備などに時間がかかるようです。落ち着いたあとは、質問を2つにしても0.25秒と、質問1つのとき(約0.2秒)とほとんど変わりません。質問を別々に送るより、まとめて聞くほうが効率的です。
また、3回とも確率は小数点以下まで完全に同じでした。Playgroundでも、約1時間あけて同じ質問をしたところ「請求・返金 90%、配送 10%」と同じ結果が返ってきました。「さっきと判定が違う」ということが起きにくいのは、業務で使ううえで安心できるポイントです。
料金:検証10回で約0.5円
OpenAIの管理画面の「使用量(Usage)」では、Decisions APIの利用分が別枠で表示されていました。Playgroundで試した10回分は、入力が合計35,284トークン、出力は0トークンでした。

料金に換算すると約0.0035ドルで、1ドル150円で計算すると約0.5円です。
使い方 | 1回あたりの目安 |
|---|---|
文章だけ(質問2つ、336トークン) | 約0.005円 |
画像1枚(平均約6,000トークン) | 約0.1円 |
画像の方がトークンを多く使いますが、それでも1回0.1円程度です。文章の判定であれば、1万件処理しても数十円という計算になります。
使う前に知っておきたい注意点
ベータ版ならではの気になる点もいくつかありました。
ログ画面に残らない:通常のチャットは「ログ」画面で履歴を確認できますが、Decisions APIのリクエストは表示されませんでした。「どう判定したか」をあとから追いたい場合は、自分のシステム側で記録しておく必要があります。
使用量の合計欄に含まれない:使用量画面の「合計トークン数」「合計リクエスト数」には、Decisions APIの分が入っていませんでした。合計欄だけを見ていると利用量を見落とします。
画像は遅くなる:文章は0.15〜0.25秒ですが、画像は0.7〜2秒ほどかかりました。「10倍速い」は文章を判定するときの話だと考えたほうがよさそうです。
Chromeの翻訳機能を使うと表示がずれる:Playgroundは英語の画面です。Chromeで日本語に翻訳して使っていたところ、質問の種類を「選択」に切り替えても表示が「述語」のままでした。中身は切り替わっていて、英語表示に戻すと正しく「Choice」と出ます。

どんな場面で役立ちそうか
今回の検証から、Decisions APIが向いているのは「答えの候補が決まっていて、数が多い判断」だと感じました。
お問い合わせやメールの担当部署への振り分け
問い合わせの緊急度の判定(急ぎのものを先に対応する)
商品写真の傷や破損のチェック
AIエージェントが次に使うツールを選ぶ場面
反対に、写真の中の細かいものを数えるような作業は苦手です。その場合も、自信度が低いものだけを人が確認する、という組み合わせ方なら使いどころがありそうです。
よくある質問
Q. Decisions APIは無料で使えますか?
A. 無料ではありませんが、とても安価です。入力100万トークンあたり0.10ドルで、出力には料金がかかりません。今回の検証では、10回試して約0.5円でした。
Q. プログラミングができなくても試せますか?
A. 試せます。OpenAIのAPIアカウントがあれば、Playgroundでブラウザから試せます。ただし、選択肢ごとの説明や、複数の質問をまとめて聞く機能はAPIでしか使えません。
Q. ChatGPTに選択肢を示して選ばせるのと何が違うのですか?
A. 大きく3つ違います。速さ(推論なしのチャットの5〜7倍)、各選択肢の確率と自信度が数字で返ってくること、必ず選択肢のどれかで答えることです。
Q. 日本語に対応していますか?
A. 対応しています。今回はプロンプトも選択肢も入力文もすべて日本語で試しましたが、問題なく判定できました。画面は英語です。
Q. 同じ質問をすると、毎回同じ答えが返ってきますか?
A. 今回の検証では、同じ入力に対して確率まで完全に同じ結果が返ってきました。約1時間あけて試した場合も同じでした。
まとめ
Decisions APIは「速いAI」として紹介されることが多いですが、実際に使ってみると、いちばん便利なのは「AIの迷いが数字で見えること」でした。
文章の判定は0.15〜0.25秒で、通常のチャット(推論なし)の5〜7倍速い
確率と自信度が返ってくるので、「自信がないものだけ人が見る」仕組みを作りやすい
プロンプトにルールを書くだけで、判定を社内ルールに合わせられる
料金はとても安く、結果も毎回同じ
写真の中の細かいものを数えるのは苦手。ただし、そのときは自信度も低くなる
お問い合わせの振り分けのように、毎日たくさん発生する「小さな判断」を自動化したい場合には、試してみる価値のあるAPIです。現在はベータ版で、数週間のうちに正式公開される予定です。
※ 本記事の内容は2026年10月13日時点のものです。速度は筆者の環境(日本からのアクセス)での実測値です。


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