Agentic RAG、どこで効くのか実際に走らせてみた
Agentic RAG、どこで効くのか実際に走らせてみた


社内文書をAIに検索させて答えさせる仕組みを「RAG」と言います。その進化版が「Agentic RAG」です。
で、実際に両方を走らせて比べてみました。Agentic RAGが勝ったのは1種類だけでした。
次に何を調べたらいいかが、1回調べてみないと分からない質問。
たとえばこういうやつです。
MP-200の代わりの機種、注文してからどのくらいかかる?
「代わりの機種」が何なのかは、調べるまで分かりません。分からないと次に何で検索したらいいかも分からない。普通のRAGはここで詰みます。
それ以外の質問では、答えは普通のRAGと同じで、料金だけ5〜7倍でした。
もうひとつ意外だったこと。無関係な文書を足して5,000件まで水増ししても、検索の精度は1ポイントも落ちませんでした。 落ちたのは、旧版とか改定前とかの紛らわしい文書を混ぜたときです。そのとき、正解の資料が512番目まで沈みました。
「文書が多いから難しい」んじゃなくて「紛らわしいから難しい」。これが一番の発見でした。
そもそもRAGって何をしてるのか
AI(ChatGPTとかClaude)は、あなたの会社の就業規則も製品カタログも知りません。学習してないので当たり前です。
なので質問が来たら、まず社内文書を検索して、見つかった数件を質問と一緒にAIへ渡します。要するにAIにカンニングペーパーを渡す仕組みです。これがRAG。
このとき「何件渡すか」を決める必要があります。検索エンジンは全文書に点数をつけて順位をつけるので、その上から何件をAIに渡すか、という設定です。3件なのか、20件なのか。
この記事ではこれを**「拾う件数」と呼びます。「文書の総数」とは別物**なので、そこだけ混ぜないでください。文書が5,000件あっても、AIに渡すのはそのうち上位3件、ということが起こります。ここ、あとで効いてきます。

普通のRAGと、Agentic RAGの違い
普通のRAGは一直線です。
1回検索する → 出てきた数件だけ読んで答える → 終わり
人にたとえると、キャビネットを1回だけ漁って、出てきた書類だけで答える新人です。足りなくても、もう一度探しに戻りません。
Agentic RAGは、ここをぐるぐる回します。
質問を小さく分ける → 検索する → 「これで答えられる?」を自分で確かめる → ダメなら言い方を変えて探し直す → 揃ったら答える

太字のところが本体です。「まだ足りてないな、探し直そう」と自分で気づける新人になった、という話です。
分かりやすい失敗例をひとつ。「有給は年間何日」と聞いたら、普通のRAGは**「保守契約についてのFAQ」を1位で返してきました**。レーザー加工機の保守契約です。有給と1ミリも関係ありません。
理由はこうです。検索エンジンには「珍しい言葉ほど重要」という考え方があります。この会社の文書だと「年間」という言葉が保守契約にしか出てこない。だから検索が**「この質問のキモは"年間"やな」と勘違いした**わけです。「有給」のほうは色んな文書に出てくるので、逆に軽く扱われました。
正解の日数表は4番目。3件しか拾わない設定だったので、届きませんでした。

Agentic RAGだと、質問を分ける段階で検索の言葉がこう変わりました。
これで日数表が4位から1位に。検索する前に事故が消えてます。
何を検索させているのか
検索対象は、架空の製造業「ミナト製作所」の社内文書です。レーザー加工機を作って売っている会社という設定で、社員向けの規程と、お客さん向けのカタログ・FAQが1つの検索窓に混ざっています(社内ナレッジベースあるあるです)。
雰囲気が伝わるように、実際の中身をいくつか貼ります。1文書はこのくらいの分量です。
こんな調子で、就業規則・経費規程・IT規程・品質基準・製品カタログ12機種・FAQ・営業ルールが合わせて67件。全部あわせても原稿用紙10枚ちょっとです。
わざと架空にしています。 実在の文書だと「この質問の正解はこれ」と断言できないからです。67件なら全部読めるので、正解を人間が確定できます。

「正解」はこう決めた
質問を作るだけでは採点できません。1問ごとに2種類の正解を先に用意しました。
答えが書いてある文書はどれか(文書名)
答えの中身は何か(文章)
そして検索の良し悪しは①だけで測ります。上位何件かの中に①が入っていたかを数えるだけ。だからAIを呼ばずに、無料で数秒で終わります。②は最後にAIの回答文を目で確かめるのに使います。
この先の表では、正解を「文書名 → 中身」の形で書きます。「該当なし」は、文書のどこにも書いていない=「分かりません」と答えるのが正解という意味です。
この表を作るのが、今回いちばん時間がかかった作業です。逆に言うと、ここさえ作れば残りは全部自動になります。
1回目:文書を見ずに書いた10問
まず、文書の中身を一切見ずに質問を書きました。書いたのはこの10問です。
我ながら突拍子もない。10問中8問が「文書に載ってない質問」になってしまいました。
普通のRAGに投げた結果がこれです。
質問 | 正解(文書 → 中身) | AIの答え | 判定 |
|---|---|---|---|
MP-200の重さは? | 製品カタログ MP-200 → 112kg | 本体重量は112kgです | ○ |
MP-300はどのくらいの電力を使う | 該当なし → 「分かりません」 | MP-100とMP-200の記載のみで、MP-300の記載はありません | ○ |
MP-400はあるの? | 該当なし → 「分かりません」 | MP-400に関する記載はありません | ○ |
有給は年間何日 | 就業規則 別表2 → 勤続年数により10〜20日 | 一律の日数を定めた記載はありません | ✕ |
ここ何の会社? | 該当なし → 「分かりません」 | (検索ヒット0件。AIに渡す材料すらない) | ○ |
求人はやってる? | 該当なし → 「分かりません」 | (検索ヒット0件) | ○ |
リモートで働けるの? | 該当なし → 「分かりません」(VPN規程は別の話) | リモート勤務の可否を定めた規定は含まれていません。あるのはVPN接続の技術規程のみ | ○ |
資本金はいくら? | 該当なし → 「分かりません」 | 記載がないためお答えできません | ○ |
社内イベントはあるの? | 該当なし → 「分かりません」 | 記載がありません | ○ |
安売りの商品は? | 該当なし → 「分かりません」(消耗品20%引きは別の話) | 「安売り商品」の記載はありません。保守契約加入で消耗品20%割引の記載のみ | ○ |
10問中9問は問題なし。
注目してほしいのが「リモートで働けるの?」です。検索はVPNの規程を掴んでいます。それでも**「それはリモート勤務の可否の話じゃない」と切り分けて**います。私が一番心配していた「似た文書を根拠にでっち上げる」が、ここで起きませんでした。
そして唯一の失敗が「有給は年間何日」。記事の最初に出した、保守契約のFAQが1位に来たやつです。
つまりあの事故を出したのは、文書を読まずに書いたこの10問でした。文書の中身を知ってたら、私は絶対に「勤続3年目の有給は何日?」と書いてます。そしたらあのバグは永久に見つかってません。
突拍子もない質問は、結果的に一番リアルな負荷試験になりました。実運用の社内チャットボットに来る質問って、だいたい作った人の想定外なので。
2回目:文書を読んでから書いた9問
次に、文書を全部読んだ上で、現場の人が実際に聞きそうな言い方で9問作り直しました。
ルールはひとつだけ決めました。文書に書いてある言葉をそのまま使わない。 「年次有給休暇の付与日数は?」と聞いたら、そりゃ当たります。それは試験になりません。
結果はこうでした。
質問 | 正解(文書 → 中身) | AIの答え | 判定 |
|---|---|---|---|
入社5が月目やけど有給とってもいい? | 就業規則 第32条 → まだ付与されていない | まだ付与されていません(6か月継続勤務が条件) | ○ |
海外出張費はでる? | 該当なし → 「分かりません」 | 国内出張の規程のみで、海外の規定は含まれていません | ○ |
MP-100とMP-200どっちが大きいものに対応している? | 両方のカタログ → MP-200(1,200mm 対 600mm) | MP-200。MP-100の2倍の加工幅です | ○ |
年間保守契約ってなに?消耗品が安くなるって聞いたんやけど | FAQ 年間保守契約 → 本体価格の8%が年額、消耗品20%割引 | 本体価格の8%が年額。お聞きの通り消耗品は20%割引です | ○ |
卓上型モデルを受注して5ヶ月経ちますが届きません | FAQ 納期 → 標準4週間。遅れの理由は文書に無い | 標準納期は4週間。5ヶ月かかる理由は文書からは判断できません | ○ |
お葬式に出席するんですけど有給使える? | 用語集 → 慶弔休暇は特別休暇で、年休とは別枠 | 慶弔休暇は年次有給休暇とは別枠。年休を充てられるかは記載がありません | ○ |
福岡に出張する場合いくらでる? | 経費規程 第8条 → 日当2,000円/日 + 宿泊上限10,000円/泊 | 福岡は「その他の地域」に該当。1泊2日なら最大14,000円 | ○ |
継続勤務年数に応じて…どのくらい増えていく? | 就業規則 別表2 → 6か月10日 〜 6年6か月以上20日 | 6か月10日、1年6か月11日…6年6か月以上20日(表で回答) | ○ |
出張費の領収書はレシートでも大丈夫? | 経費規程 第9条 → 領収書必須。レシート可否は書かれていない | 「領収書の添付は必須」の記載はありますが、レシート可否は記載がありません | ○ |
9問とも正解。 「お葬式」から慶弔休暇にたどり着くのも、「福岡」を「その他の地域」に当てはめるのも通りました。
最後の行が地味に大事です。「レシートでも大丈夫?」は、関連する文書はあるのに、聞かれたことズバリは書いてない。こういう半分だけ答えられる質問が実務では一番多いと思います。ここは正解を「書いてある範囲を答えて、書いてない部分は書いてないと言う」と定義しました。
検証が閉まらなかったので、質問を作り直した
ここで手が止まりました。
ここまでで19問測って、18問は普通のRAGで正解。Agentic RAGが勝った質問が1問もない。 これだと「Agentic RAGは要らない」としか書けませんが、それは負ける場面を用意できてないだけかもしれません。検証として閉じてない。
なので、素のRAGが原理的に届かない質問を、意図的に設計することにしました。それが次のやつです。
勝負がついた質問
さっきの「代わりの機種、どのくらいかかる?」です。答えるのに3段いります。

ポイントは、「MP-250」という単語が、質問文のどこにも出てこないこと。①を調べるまで、②③で何を検索したらいいか決まりません。1回の検索で終わらせる方法が、そもそも存在しないんです。
普通のRAG(8件拾う設定)の答え:
MP-200の後継機種はMP-250です。ただし「注文してからどのくらいかかるか」については、参考文書に具体的な日数の記載がありません。
後継機までは分かってる。でもそこで止まります。探しに戻る機能がないので。
エージェントの独り言が面白い
Agentic RAGのほうも、1周目と2周目は外してます。ただ途中の判断が面白かったので、そのまま貼ります。
2周目がいいんですよ。カタログの「大型レーザー加工機 MP-250」という1行を見て、型番で探すのをやめて、分類名で探し直そうと自分で決めてます。
1回きりの検索では絶対に出てこない発想です。しかも人間が事前に「こういうときはこう言い換えろ」とルールを書いておくのも難しい。
結果はこうなりました。
MP-200の後継機はMP-250です。MP-250は大型モデルに該当し、標準納期は受注後12週間です。年末年始および8月の連休期間は2週間程度加算されます。
何周させるかで結果が変わる
これは走らせるまで気づきませんでした。
最初は「小さい質問ひとつにつき最大2周まで」という設定にしてたんです。この設定だと、さっきの質問は解けません。 3周目でやっと届いてる。
Agentic RAGにしただけでは足りなくて、何周まで許すかで結果が変わる。しかも周回数はそのまま料金です。導入するなら絶対に触ることになる場所だと思います。
「拾う件数を増やせばいいのでは」が死ぬところ
Agentic RAGの話をすると、必ず言われるのがこれです。3件じゃなくて10件拾えば済むやろ、と。
で、小さい文書セット(10件)だと本当にそのとおりでした。普通のRAGが落とした質問、拾う件数を3から5に増やすだけで全部解けます。Agentic RAGを回しても答えは同じで、料金だけ5〜6倍。
ただ、10件しかない中から5件拾うって、半分まるごとAIに渡してるってことなんですよね。そりゃ当たります。
そもそも67件という文書数自体が少なすぎます。実際の社内文書は数千件あるはずで、その規模で同じことが言えるのか確かめないと意味がありません。
なので文書を増やしながら測り直しました。ここはAIを一度も使いません。検索だけの話なので、無料で数秒です。
やり方はこうです。答えが載っている67件はそのまま固定して、その周りに自動生成のダミー文書を足していく。 5,000件まで増やしたときは、うち4,933件がダミーです。
全部を本物にしないのは、答え合わせができなくなるからです。さっきの正解表を5,000件ぶん作るのは現実的じゃありません。なので今回測れているのは、上位の枠を奪い合う相手が増えたときに、正解が沈むかどうかです。ここは正直に書いておきます。
実験A:AIに渡す件数を変えてみる
まず、文書は67件のまま固定して、AIに渡す件数だけを変えます。
AIに渡す件数 | 必要な資料がそろった割合 |
|---|---|
3件 | 50% |
5件 | 60% |
8件 | 60% |
20件 | 80% |
割合の意味から書きます。 対象は答えがある10問。「必要な資料がそろった」とは、その質問に答えるのに要る文書が全部、AIに渡ったということです。50%なら10問中5問。
たとえば「お葬式で休むとき何日もらえる?」に答えるには、用語集(お葬式=慶弔休暇=特別休暇)と就業規則 第33条(父母なら3日)の2つが要ります。片方しか渡らなければ失敗です。
結果は素直でした。渡す件数を増やせば良くなる。 50%から80%へ、30ポイント上がります。たくさん渡すほど当たりが混ざるので、当然といえば当然です。

ただし80%で止まります。20件渡しても解けない質問が2つ残りました。「年休は何日もらえる」と「お葬式で休むとき何日もらえる?」です。
この2つ、実は順位が低いんじゃなくて検索結果に1件も出てきません。規程には「年次有給休暇」「慶弔休暇」としか書いてなくて、質問の言葉と文字が1つも重ならないからです。
渡す量をいくら増やしても届かない。 ここは後半で効いてきます。
実験B:文書の総数を変えてみる
次は逆です。渡す件数を20件で固定して、文書の総数だけを増やします。無関係な他部署の文書(業務マニュアル、議事録、月次報告とか)で水増ししました。
文書の総数 | 必要な資料がそろった割合 |
|---|---|
67件 | 80% |
500件 | 80% |
5,000件 | 80% |

74倍にしても80%のまま。1ポイントも落ちません。 これは意外でした。
「文書が増えたら検索が難しくなるはず」と思っていたんですが、そうはならなかった。
考えてみたら当然で、「MP-250」「年休」「慶弔」みたいな珍しい言葉は、関係ない文書を何万件積んでも薄まらないんです。むしろ全体の件数が増えるほど「この言葉が出てくる文書はレア」ということになって、探しやすくなります。
つまり、いじれるツマミが2つあって、
「AIに渡す件数」のツマミ → 回すと効く(ただし天井あり)
「文書の総数」のツマミ → 回しても何も起きない
ということでした。
実験C:足す文書を「紛らわしいもの」に変えてみる
実験Bで足したのは、無関係な他部署の文書でした。今度は同じ型番・同じ話題を含む文書に差し替えます。旧版の納期一覧、販売終了のお知らせ、改定前の別表、在宅勤務のトライアル報告。社内フォルダに絶対入ってるやつです。
条件は実験Bと同じで、渡す件数は20件のまま固定します。
文書の総数 | 必要な資料がそろった割合 |
|---|---|
67件 | 80% |
200件 | 60% |
500件 | 40% |
1,000件 | 40% |
2,000件 | 40% |
崩れました。実験Bでは80%のまま動かなかったのが、今度は半分の40%まで落ちます。

理由は、答えの資料が下に沈むからです。例の3段の質問で、正解の資料が検索結果の何番目に来たかを追うとこうなりました。
文書の総数 | 答えの資料は何番目か |
|---|---|
67件 | 14番目 |
200件 | 52番目 |
500件 | 131番目 |
1,000件 | 256番目 |
2,000件 | 512番目 |
14番目から512番目まで沈みました。 1回の検索で届かせるには512件渡すしかありません。そんな量、AIは一度に読めません。
ここが分岐点です。拾う件数を増やすという安い手は、紛らわしい文書が増えた瞬間に死にます。 Agentic RAGは件数を増やすんじゃなくて探し方のほうを変えて近づくので、この壁を越えられる。
あと、これは実務でけっこう効く話だと思うんですが、旧版・改定前・廃止済みの文書が一番の敵です。社内フォルダに一番溜まってるやつが、そのまま検索精度を殺してる。
ほとんどの質問では要らんかった
さっきの2つの表のとおり、19問中18問は普通のRAGで正解でした。Agentic RAGが要らなかった質問のほうが圧倒的に多いです。
一番驚いたのは「福岡に出張したらいくら?」でした。文書には**「東京23区・大阪市内は12,000円、その他の地域は10,000円」**としか書いてなくて、福岡という地名はどこにも出てきません。それでも自分で当てはめて、計算例まで出してきます。
心配してた「それっぽい嘘をつく」現象も起きませんでした。念のため、指示文から「推測しないでください」の一文を外して同じ質問を投げてみましたが、結果は変わらず棄権。指示が効いていたわけでもなかったということです。
つまり普通のRAGの弱点は、嘘をつくことじゃなくて取りこぼすこと。だからAgentic RAGの値打ちも、嘘の防止じゃなくて拾い直しにあります。
ここを整理しておかないと、「安全のためにAgentic RAG」という筋の悪い理由で高い構成を選ぶことになります。
値段
例の3段の質問での実測です。
普通のRAG | Agentic RAG | |
|---|---|---|
結果 | ✕ 答えられず | ○ 12週間 |
AIに聞いた回数 | 1回 | 7回 |
概算コスト | 1.4円 | 9.8円 |
Fig9:3段の質問を1回解くのにかかったもの

HEROZ社の公開実験でも、普通のRAGが1回・1.36円、Agentic RAGが7.1回・6.41円で、**評価点はほぼ同じ(3.1と3.2)**でした。桁は合ってます。
平均点で比べるとAgentic RAGは負けます。効く質問だけを見ないと値打ちが見えないタイプの技術です。
導入するなら、この順番
まず「必要な資料が手元に来ていたか」を測る。 AI不要、数秒、無料です
来てるのに間違えるなら、Agentic RAGにしても直りません。指示文の書き方を見直すほうへ
来てないなら、まず拾う件数を増やす・検索の言葉を1回言い換える・並べ替えを入れる
それでも残るのが、途中で調べる対象が変わる質問。ここがAgentic RAGの出番
周回数の上限は必ず調整する。2周と3周で解ける質問が変わります
あと、紛らわしい旧版文書を捨てるのが、どの手法より安く効くかもしれません。上の表がそれを言ってます。

Fig10:Agentic RAGに手を出す前に通る道
弱いところ
検索は昔ながらのキーワード方式だけで試しました。意味で探す方式なら「年間」の事故は起きなかったかも
中身のある文書は67件のままで、残りは自動生成のダミーです。 本物の文書が数千件ある状態は再現できていません
本物なら「答えが2つの文書に分かれている」「同じ話題が5部署の文書に散っている」といった散らばり方が出ますが、そこは今回まったく触れていません
AIは1種類しか試してません。もっと軽いAIだと結論が変わる可能性があります
例の3段の質問は、意図的に作ったものです。実務でこの型が何割あるかは別途調べないと分かりません
参考
社内文書をAIに検索させて答えさせる仕組みを「RAG」と言います。その進化版が「Agentic RAG」です。
で、実際に両方を走らせて比べてみました。Agentic RAGが勝ったのは1種類だけでした。
次に何を調べたらいいかが、1回調べてみないと分からない質問。
たとえばこういうやつです。
MP-200の代わりの機種、注文してからどのくらいかかる?
「代わりの機種」が何なのかは、調べるまで分かりません。分からないと次に何で検索したらいいかも分からない。普通のRAGはここで詰みます。
それ以外の質問では、答えは普通のRAGと同じで、料金だけ5〜7倍でした。
もうひとつ意外だったこと。無関係な文書を足して5,000件まで水増ししても、検索の精度は1ポイントも落ちませんでした。 落ちたのは、旧版とか改定前とかの紛らわしい文書を混ぜたときです。そのとき、正解の資料が512番目まで沈みました。
「文書が多いから難しい」んじゃなくて「紛らわしいから難しい」。これが一番の発見でした。
そもそもRAGって何をしてるのか
AI(ChatGPTとかClaude)は、あなたの会社の就業規則も製品カタログも知りません。学習してないので当たり前です。
なので質問が来たら、まず社内文書を検索して、見つかった数件を質問と一緒にAIへ渡します。要するにAIにカンニングペーパーを渡す仕組みです。これがRAG。
このとき「何件渡すか」を決める必要があります。検索エンジンは全文書に点数をつけて順位をつけるので、その上から何件をAIに渡すか、という設定です。3件なのか、20件なのか。
この記事ではこれを**「拾う件数」と呼びます。「文書の総数」とは別物**なので、そこだけ混ぜないでください。文書が5,000件あっても、AIに渡すのはそのうち上位3件、ということが起こります。ここ、あとで効いてきます。

普通のRAGと、Agentic RAGの違い
普通のRAGは一直線です。
1回検索する → 出てきた数件だけ読んで答える → 終わり
人にたとえると、キャビネットを1回だけ漁って、出てきた書類だけで答える新人です。足りなくても、もう一度探しに戻りません。
Agentic RAGは、ここをぐるぐる回します。
質問を小さく分ける → 検索する → 「これで答えられる?」を自分で確かめる → ダメなら言い方を変えて探し直す → 揃ったら答える

太字のところが本体です。「まだ足りてないな、探し直そう」と自分で気づける新人になった、という話です。
分かりやすい失敗例をひとつ。「有給は年間何日」と聞いたら、普通のRAGは**「保守契約についてのFAQ」を1位で返してきました**。レーザー加工機の保守契約です。有給と1ミリも関係ありません。
理由はこうです。検索エンジンには「珍しい言葉ほど重要」という考え方があります。この会社の文書だと「年間」という言葉が保守契約にしか出てこない。だから検索が**「この質問のキモは"年間"やな」と勘違いした**わけです。「有給」のほうは色んな文書に出てくるので、逆に軽く扱われました。
正解の日数表は4番目。3件しか拾わない設定だったので、届きませんでした。

Agentic RAGだと、質問を分ける段階で検索の言葉がこう変わりました。
これで日数表が4位から1位に。検索する前に事故が消えてます。
何を検索させているのか
検索対象は、架空の製造業「ミナト製作所」の社内文書です。レーザー加工機を作って売っている会社という設定で、社員向けの規程と、お客さん向けのカタログ・FAQが1つの検索窓に混ざっています(社内ナレッジベースあるあるです)。
雰囲気が伝わるように、実際の中身をいくつか貼ります。1文書はこのくらいの分量です。
こんな調子で、就業規則・経費規程・IT規程・品質基準・製品カタログ12機種・FAQ・営業ルールが合わせて67件。全部あわせても原稿用紙10枚ちょっとです。
わざと架空にしています。 実在の文書だと「この質問の正解はこれ」と断言できないからです。67件なら全部読めるので、正解を人間が確定できます。

「正解」はこう決めた
質問を作るだけでは採点できません。1問ごとに2種類の正解を先に用意しました。
答えが書いてある文書はどれか(文書名)
答えの中身は何か(文章)
そして検索の良し悪しは①だけで測ります。上位何件かの中に①が入っていたかを数えるだけ。だからAIを呼ばずに、無料で数秒で終わります。②は最後にAIの回答文を目で確かめるのに使います。
この先の表では、正解を「文書名 → 中身」の形で書きます。「該当なし」は、文書のどこにも書いていない=「分かりません」と答えるのが正解という意味です。
この表を作るのが、今回いちばん時間がかかった作業です。逆に言うと、ここさえ作れば残りは全部自動になります。
1回目:文書を見ずに書いた10問
まず、文書の中身を一切見ずに質問を書きました。書いたのはこの10問です。
我ながら突拍子もない。10問中8問が「文書に載ってない質問」になってしまいました。
普通のRAGに投げた結果がこれです。
質問 | 正解(文書 → 中身) | AIの答え | 判定 |
|---|---|---|---|
MP-200の重さは? | 製品カタログ MP-200 → 112kg | 本体重量は112kgです | ○ |
MP-300はどのくらいの電力を使う | 該当なし → 「分かりません」 | MP-100とMP-200の記載のみで、MP-300の記載はありません | ○ |
MP-400はあるの? | 該当なし → 「分かりません」 | MP-400に関する記載はありません | ○ |
有給は年間何日 | 就業規則 別表2 → 勤続年数により10〜20日 | 一律の日数を定めた記載はありません | ✕ |
ここ何の会社? | 該当なし → 「分かりません」 | (検索ヒット0件。AIに渡す材料すらない) | ○ |
求人はやってる? | 該当なし → 「分かりません」 | (検索ヒット0件) | ○ |
リモートで働けるの? | 該当なし → 「分かりません」(VPN規程は別の話) | リモート勤務の可否を定めた規定は含まれていません。あるのはVPN接続の技術規程のみ | ○ |
資本金はいくら? | 該当なし → 「分かりません」 | 記載がないためお答えできません | ○ |
社内イベントはあるの? | 該当なし → 「分かりません」 | 記載がありません | ○ |
安売りの商品は? | 該当なし → 「分かりません」(消耗品20%引きは別の話) | 「安売り商品」の記載はありません。保守契約加入で消耗品20%割引の記載のみ | ○ |
10問中9問は問題なし。
注目してほしいのが「リモートで働けるの?」です。検索はVPNの規程を掴んでいます。それでも**「それはリモート勤務の可否の話じゃない」と切り分けて**います。私が一番心配していた「似た文書を根拠にでっち上げる」が、ここで起きませんでした。
そして唯一の失敗が「有給は年間何日」。記事の最初に出した、保守契約のFAQが1位に来たやつです。
つまりあの事故を出したのは、文書を読まずに書いたこの10問でした。文書の中身を知ってたら、私は絶対に「勤続3年目の有給は何日?」と書いてます。そしたらあのバグは永久に見つかってません。
突拍子もない質問は、結果的に一番リアルな負荷試験になりました。実運用の社内チャットボットに来る質問って、だいたい作った人の想定外なので。
2回目:文書を読んでから書いた9問
次に、文書を全部読んだ上で、現場の人が実際に聞きそうな言い方で9問作り直しました。
ルールはひとつだけ決めました。文書に書いてある言葉をそのまま使わない。 「年次有給休暇の付与日数は?」と聞いたら、そりゃ当たります。それは試験になりません。
結果はこうでした。
質問 | 正解(文書 → 中身) | AIの答え | 判定 |
|---|---|---|---|
入社5が月目やけど有給とってもいい? | 就業規則 第32条 → まだ付与されていない | まだ付与されていません(6か月継続勤務が条件) | ○ |
海外出張費はでる? | 該当なし → 「分かりません」 | 国内出張の規程のみで、海外の規定は含まれていません | ○ |
MP-100とMP-200どっちが大きいものに対応している? | 両方のカタログ → MP-200(1,200mm 対 600mm) | MP-200。MP-100の2倍の加工幅です | ○ |
年間保守契約ってなに?消耗品が安くなるって聞いたんやけど | FAQ 年間保守契約 → 本体価格の8%が年額、消耗品20%割引 | 本体価格の8%が年額。お聞きの通り消耗品は20%割引です | ○ |
卓上型モデルを受注して5ヶ月経ちますが届きません | FAQ 納期 → 標準4週間。遅れの理由は文書に無い | 標準納期は4週間。5ヶ月かかる理由は文書からは判断できません | ○ |
お葬式に出席するんですけど有給使える? | 用語集 → 慶弔休暇は特別休暇で、年休とは別枠 | 慶弔休暇は年次有給休暇とは別枠。年休を充てられるかは記載がありません | ○ |
福岡に出張する場合いくらでる? | 経費規程 第8条 → 日当2,000円/日 + 宿泊上限10,000円/泊 | 福岡は「その他の地域」に該当。1泊2日なら最大14,000円 | ○ |
継続勤務年数に応じて…どのくらい増えていく? | 就業規則 別表2 → 6か月10日 〜 6年6か月以上20日 | 6か月10日、1年6か月11日…6年6か月以上20日(表で回答) | ○ |
出張費の領収書はレシートでも大丈夫? | 経費規程 第9条 → 領収書必須。レシート可否は書かれていない | 「領収書の添付は必須」の記載はありますが、レシート可否は記載がありません | ○ |
9問とも正解。 「お葬式」から慶弔休暇にたどり着くのも、「福岡」を「その他の地域」に当てはめるのも通りました。
最後の行が地味に大事です。「レシートでも大丈夫?」は、関連する文書はあるのに、聞かれたことズバリは書いてない。こういう半分だけ答えられる質問が実務では一番多いと思います。ここは正解を「書いてある範囲を答えて、書いてない部分は書いてないと言う」と定義しました。
検証が閉まらなかったので、質問を作り直した
ここで手が止まりました。
ここまでで19問測って、18問は普通のRAGで正解。Agentic RAGが勝った質問が1問もない。 これだと「Agentic RAGは要らない」としか書けませんが、それは負ける場面を用意できてないだけかもしれません。検証として閉じてない。
なので、素のRAGが原理的に届かない質問を、意図的に設計することにしました。それが次のやつです。
勝負がついた質問
さっきの「代わりの機種、どのくらいかかる?」です。答えるのに3段いります。

ポイントは、「MP-250」という単語が、質問文のどこにも出てこないこと。①を調べるまで、②③で何を検索したらいいか決まりません。1回の検索で終わらせる方法が、そもそも存在しないんです。
普通のRAG(8件拾う設定)の答え:
MP-200の後継機種はMP-250です。ただし「注文してからどのくらいかかるか」については、参考文書に具体的な日数の記載がありません。
後継機までは分かってる。でもそこで止まります。探しに戻る機能がないので。
エージェントの独り言が面白い
Agentic RAGのほうも、1周目と2周目は外してます。ただ途中の判断が面白かったので、そのまま貼ります。
2周目がいいんですよ。カタログの「大型レーザー加工機 MP-250」という1行を見て、型番で探すのをやめて、分類名で探し直そうと自分で決めてます。
1回きりの検索では絶対に出てこない発想です。しかも人間が事前に「こういうときはこう言い換えろ」とルールを書いておくのも難しい。
結果はこうなりました。
MP-200の後継機はMP-250です。MP-250は大型モデルに該当し、標準納期は受注後12週間です。年末年始および8月の連休期間は2週間程度加算されます。
何周させるかで結果が変わる
これは走らせるまで気づきませんでした。
最初は「小さい質問ひとつにつき最大2周まで」という設定にしてたんです。この設定だと、さっきの質問は解けません。 3周目でやっと届いてる。
Agentic RAGにしただけでは足りなくて、何周まで許すかで結果が変わる。しかも周回数はそのまま料金です。導入するなら絶対に触ることになる場所だと思います。
「拾う件数を増やせばいいのでは」が死ぬところ
Agentic RAGの話をすると、必ず言われるのがこれです。3件じゃなくて10件拾えば済むやろ、と。
で、小さい文書セット(10件)だと本当にそのとおりでした。普通のRAGが落とした質問、拾う件数を3から5に増やすだけで全部解けます。Agentic RAGを回しても答えは同じで、料金だけ5〜6倍。
ただ、10件しかない中から5件拾うって、半分まるごとAIに渡してるってことなんですよね。そりゃ当たります。
そもそも67件という文書数自体が少なすぎます。実際の社内文書は数千件あるはずで、その規模で同じことが言えるのか確かめないと意味がありません。
なので文書を増やしながら測り直しました。ここはAIを一度も使いません。検索だけの話なので、無料で数秒です。
やり方はこうです。答えが載っている67件はそのまま固定して、その周りに自動生成のダミー文書を足していく。 5,000件まで増やしたときは、うち4,933件がダミーです。
全部を本物にしないのは、答え合わせができなくなるからです。さっきの正解表を5,000件ぶん作るのは現実的じゃありません。なので今回測れているのは、上位の枠を奪い合う相手が増えたときに、正解が沈むかどうかです。ここは正直に書いておきます。
実験A:AIに渡す件数を変えてみる
まず、文書は67件のまま固定して、AIに渡す件数だけを変えます。
AIに渡す件数 | 必要な資料がそろった割合 |
|---|---|
3件 | 50% |
5件 | 60% |
8件 | 60% |
20件 | 80% |
割合の意味から書きます。 対象は答えがある10問。「必要な資料がそろった」とは、その質問に答えるのに要る文書が全部、AIに渡ったということです。50%なら10問中5問。
たとえば「お葬式で休むとき何日もらえる?」に答えるには、用語集(お葬式=慶弔休暇=特別休暇)と就業規則 第33条(父母なら3日)の2つが要ります。片方しか渡らなければ失敗です。
結果は素直でした。渡す件数を増やせば良くなる。 50%から80%へ、30ポイント上がります。たくさん渡すほど当たりが混ざるので、当然といえば当然です。

ただし80%で止まります。20件渡しても解けない質問が2つ残りました。「年休は何日もらえる」と「お葬式で休むとき何日もらえる?」です。
この2つ、実は順位が低いんじゃなくて検索結果に1件も出てきません。規程には「年次有給休暇」「慶弔休暇」としか書いてなくて、質問の言葉と文字が1つも重ならないからです。
渡す量をいくら増やしても届かない。 ここは後半で効いてきます。
実験B:文書の総数を変えてみる
次は逆です。渡す件数を20件で固定して、文書の総数だけを増やします。無関係な他部署の文書(業務マニュアル、議事録、月次報告とか)で水増ししました。
文書の総数 | 必要な資料がそろった割合 |
|---|---|
67件 | 80% |
500件 | 80% |
5,000件 | 80% |

74倍にしても80%のまま。1ポイントも落ちません。 これは意外でした。
「文書が増えたら検索が難しくなるはず」と思っていたんですが、そうはならなかった。
考えてみたら当然で、「MP-250」「年休」「慶弔」みたいな珍しい言葉は、関係ない文書を何万件積んでも薄まらないんです。むしろ全体の件数が増えるほど「この言葉が出てくる文書はレア」ということになって、探しやすくなります。
つまり、いじれるツマミが2つあって、
「AIに渡す件数」のツマミ → 回すと効く(ただし天井あり)
「文書の総数」のツマミ → 回しても何も起きない
ということでした。
実験C:足す文書を「紛らわしいもの」に変えてみる
実験Bで足したのは、無関係な他部署の文書でした。今度は同じ型番・同じ話題を含む文書に差し替えます。旧版の納期一覧、販売終了のお知らせ、改定前の別表、在宅勤務のトライアル報告。社内フォルダに絶対入ってるやつです。
条件は実験Bと同じで、渡す件数は20件のまま固定します。
文書の総数 | 必要な資料がそろった割合 |
|---|---|
67件 | 80% |
200件 | 60% |
500件 | 40% |
1,000件 | 40% |
2,000件 | 40% |
崩れました。実験Bでは80%のまま動かなかったのが、今度は半分の40%まで落ちます。

理由は、答えの資料が下に沈むからです。例の3段の質問で、正解の資料が検索結果の何番目に来たかを追うとこうなりました。
文書の総数 | 答えの資料は何番目か |
|---|---|
67件 | 14番目 |
200件 | 52番目 |
500件 | 131番目 |
1,000件 | 256番目 |
2,000件 | 512番目 |
14番目から512番目まで沈みました。 1回の検索で届かせるには512件渡すしかありません。そんな量、AIは一度に読めません。
ここが分岐点です。拾う件数を増やすという安い手は、紛らわしい文書が増えた瞬間に死にます。 Agentic RAGは件数を増やすんじゃなくて探し方のほうを変えて近づくので、この壁を越えられる。
あと、これは実務でけっこう効く話だと思うんですが、旧版・改定前・廃止済みの文書が一番の敵です。社内フォルダに一番溜まってるやつが、そのまま検索精度を殺してる。
ほとんどの質問では要らんかった
さっきの2つの表のとおり、19問中18問は普通のRAGで正解でした。Agentic RAGが要らなかった質問のほうが圧倒的に多いです。
一番驚いたのは「福岡に出張したらいくら?」でした。文書には**「東京23区・大阪市内は12,000円、その他の地域は10,000円」**としか書いてなくて、福岡という地名はどこにも出てきません。それでも自分で当てはめて、計算例まで出してきます。
心配してた「それっぽい嘘をつく」現象も起きませんでした。念のため、指示文から「推測しないでください」の一文を外して同じ質問を投げてみましたが、結果は変わらず棄権。指示が効いていたわけでもなかったということです。
つまり普通のRAGの弱点は、嘘をつくことじゃなくて取りこぼすこと。だからAgentic RAGの値打ちも、嘘の防止じゃなくて拾い直しにあります。
ここを整理しておかないと、「安全のためにAgentic RAG」という筋の悪い理由で高い構成を選ぶことになります。
値段
例の3段の質問での実測です。
普通のRAG | Agentic RAG | |
|---|---|---|
結果 | ✕ 答えられず | ○ 12週間 |
AIに聞いた回数 | 1回 | 7回 |
概算コスト | 1.4円 | 9.8円 |
Fig9:3段の質問を1回解くのにかかったもの

HEROZ社の公開実験でも、普通のRAGが1回・1.36円、Agentic RAGが7.1回・6.41円で、**評価点はほぼ同じ(3.1と3.2)**でした。桁は合ってます。
平均点で比べるとAgentic RAGは負けます。効く質問だけを見ないと値打ちが見えないタイプの技術です。
導入するなら、この順番
まず「必要な資料が手元に来ていたか」を測る。 AI不要、数秒、無料です
来てるのに間違えるなら、Agentic RAGにしても直りません。指示文の書き方を見直すほうへ
来てないなら、まず拾う件数を増やす・検索の言葉を1回言い換える・並べ替えを入れる
それでも残るのが、途中で調べる対象が変わる質問。ここがAgentic RAGの出番
周回数の上限は必ず調整する。2周と3周で解ける質問が変わります
あと、紛らわしい旧版文書を捨てるのが、どの手法より安く効くかもしれません。上の表がそれを言ってます。

Fig10:Agentic RAGに手を出す前に通る道
弱いところ
検索は昔ながらのキーワード方式だけで試しました。意味で探す方式なら「年間」の事故は起きなかったかも
中身のある文書は67件のままで、残りは自動生成のダミーです。 本物の文書が数千件ある状態は再現できていません
本物なら「答えが2つの文書に分かれている」「同じ話題が5部署の文書に散っている」といった散らばり方が出ますが、そこは今回まったく触れていません
AIは1種類しか試してません。もっと軽いAIだと結論が変わる可能性があります
例の3段の質問は、意図的に作ったものです。実務でこの型が何割あるかは別途調べないと分かりません
参考


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