社長に「ElevenLabs ElevenAgentsでコールセンター作ってみて」と言われたので、電話とWebで比較検証してみた
社長に「ElevenLabs ElevenAgentsでコールセンター作ってみて」と言われたので、電話とWebで比較検証してみた


ある日、社長から指示が降ってきました。
「ElevenLabs ElevenAgentsでコールセンター作ってみてください」
ElevenLabs ElevenAgentsは、音声会話型のAIエージェントを作れるサービス。これでコールセンター業務をAIに任せる検証をしてほしい、という趣旨です。
「面白そうやな、半日もあれば動くやろ」と思ってたら、見事に予想を裏切られました。Web版(Framer埋め込み)は完璧に動くのに、電話版(Twilio経由)は応答がうまく返ってこない。
本記事は、同じプロンプト・同じエージェントで 電話とWebを比較検証した結果のレポート です。
ステップ1:まずはエージェント「ハル」を作る
最初に取り組んだのは、ElevenAgents上でのエージェント作成。VISKの案内係として動かすので、名前は 「ハル」 にしました。
設定はこんなところ:
名前:ハル
言語:日本語
ボイス:Otani(日本語対応の自然な声)
LLM:Gemini 2.5 Flash(ElevenAgentsのデフォルト)
知識源:visk.co.jp の内容を学習
システムプロンプトには「VISKの顧客サポートAIエージェントとして、丁寧で親しみやすい対応をする」という性格づけを書きました。
テンプレートベースで作れるので、30分程度で完了。拍子抜けするくらい早いです。
ステップ2:ブログ映えを狙ってFramerにも埋め込む
ハルが動くようになったところで、ふと思いつきました。
「これブログ記事にする時、Framerに埋め込んで実際に話せる状態を見せたら映えるんちゃう?」
VISKコーポレートサイトはFramerで構築しているので、Code Component機能でReactコンポーネントを作って、ElevenLabsのWidgetを埋め込んでみます。
// 簡略版 useEffect(() => { const script = document.createElement('script') script.src = 'https://elevenlabs.io/convai-widget/index.js' document.body.appendChild(script) }, []) return <elevenlabs-convai agent-id={agentId} />
実装はあっという間。これでブラウザからハルと音声で会話できる状態に。
ただし、これは検証目的で作ったもの。実際にVISKコーポレートサイトの公開ページには配置していません(理由は後述)。
ステップ3:社長から追加リクエスト「電話でもできるかも試してください」
ここまで報告したところ、社長から一言。
「電話でもできるかも試してください」
確かに、コールセンターって本来は電話で受けるもの。Webチャットだけでは検証として中途半端です。
ということで、本記事のメインパート、Twilio経由で電話番号を連携させる作業 に入ります。
ステップ4:Twilioで米国電話番号を取得
ElevenAgentsとTwilioは連携機能が用意されているので、Twilio側で電話番号を取得して、AccountSIDとAuthTokenを使ってElevenAgents側に登録する流れです。
Twilioアカウント作成&アップグレード
無料トライアルは制約があるので、最初からPay-as-you-goにアップグレード。アップグレード時に求められる情報がそこそこあります:
Customer Profile(氏名・電話番号・住所)
本人確認書類(運転免許証など)
Tax ID(個人なら空欄でOK)
初期チャージ $20
身分証アップロードまで含めて20分くらいでした。
日本番号を取ろうとすると法人登録や追加審査が必要で時間がかかるため、検証段階では 米国番号で十分 と判断。番号の月額料金は $1.15 でした。
ElevenAgents側で番号をインポート
ElevenAgents管理画面 → 左サイドバー「電話番号」→「Twilioから電話番号をインポート」。AccountSID / AuthToken / 電話番号 の3点を入力するだけ。
連携自体は3分で完了。最後にエージェント(ハル)をこの電話番号に紐付けて、ステータスが「ライブ」になれば完成です。
ステップ5:実際に電話をかけてみた(1回目:苦戦)
セットアップ完了。スマホから米国番号に発信します。
呼び出し音、応答音、ハルの冒頭挨拶までは順調。
「お電話ありがとうございます。株式会社VISKです...」
挨拶終わったので質問してみました。
返ってこない。
「あれ、AI壊れてる?」と思って、結局50秒で電話を切りました。
実際の会話
ログを見て原因究明
ElevenLabs管理画面の「会話」メニューで、さっきの通話ログを確認できます。
そこに警告が一つ:
Audio duration mismatch: this may indicate non-continuous audio input and can cause audio overlap or desync in playback.
また自動評価では:
評価項目 | 結果 |
|---|---|
サービス内容説明の提供 | ❌ failure |
担当者への連携提案 | ❌ failure |
適切なトーン | ✅ success |
日本語での対応 | ✅ success |
「会話が2ターンしかない、応答できる前に終わってしまった」というのが評価コメントでした。
つまり、応答準備中の無音を「壊れてる」と勘違いして切ってしまった のが真相。国際電話の音声処理は数秒〜十数秒かかることもあるようです。
ステップ6:「待つ作戦」で再挑戦(2回目:それでも厳しい)
学びを活かして再挑戦。今度は 質問のあと最低15秒は無言で待つ ルールで臨みます。
2回目のログ詳細
評価項目 | 結果 |
|---|---|
service_explanation_provided | ✅ success |
callback_offered | ❌ failure |
tone_appropriate | ✅ success |
japanese_used | ✅ success |
切断理由は:
No user message received for 60 seconds - the websocket connection was closed, or a network error occurred.
「60秒無発話で自動切断」のシステム仕様に引っかかった形。
衝撃の発見:ハルはちゃんと応答していた
しかし、文字起こしタブを開いて愕然としました。全ターンでハルがちゃんと応答していた のです。
各ターンの処理時間も記録されていて、LLM(応答生成)が1〜2秒、TTS(音声合成)が300〜400msで完了しています。ハル側の処理はむしろ高速 でした。
つまり、こちらでは「無音」だと思っていた時間に、ハルは応答を生成して音声を送信していた。それが何らかの理由で電話に届いていなかった、ということになります。
「AIが応答してくれない」のではなく「AIは応答してるのに音声が届いてない」のだとしたら、原因はAIエージェント自体ではなく、通信経路の方にある可能性が高い 。この仮説を検証するため、次のステップで通信経路だけ変えて試してみることにしました。
文字起こしを見て気づいた致命的問題
ログの文字起こしを見ると、最後の質問がこう認識されてました。
ユーザー:「リスクは大阪のどこにあるん?」
(´・ω・`)
「VISK」が「リスク」に誤認識されてた…!国際電話の音声品質では「V」音の認識が難しいようです。
つまり1回目より進歩したものの、まだ 応答遅延と認識ミス で会話として成立してない状態。「これは電話そのものに問題があるんちゃうか?」と仮説を立てました。
ステップ7:仮説検証 — Framer版と比較してみる
電話の問題なのか、ElevenLabsエージェント自体の問題なのか。通信経路だけ変えて、同じ条件で比較検証 することにしました。
実験設計
変数 | 設定 |
|---|---|
エージェント | 同じ「ハル」 |
システムプロンプト | 同じ |
知識ベース | 同じ(visk.co.jp) |
質問内容と順番 | 同じ4つの質問 |
唯一の違い | 通信経路(電話 vs Framerブラウザ) |
クリーンな比較実験です。
ステップ8:比較結果 — 違いが明確すぎた
サマリー比較
項目 | 📞 電話(Twilio米国) | 💻 Framer(ブラウザ) |
|---|---|---|
通話ステータス | ❌ エラー | ✅ 成功 |
接続時間 | 60秒タイムアウト | 3分8秒(自然終了) |
切断理由 | システム強制切断 | ハルが自然に締めた |
警告 | Audio duration mismatch | なし |
基準評価 | 3 / 4 success | 4 / 4 success ⭐ |
service_interest 抽出 | ❌ null | ✅ 「AIシステム開発」 |
callback_offered | ❌ failure | ✅ success |
Framer版は全項目で勝利。
認識精度の比較
Framerも完璧ではないものの、「ビスク」(VISKのローマ字読み) とまだ近い。電話の「リスク」は意味が完全に変わってしまいます。
Framer版の実際のやり取り
電話版と違って、Framer版では全ターンスムーズに会話が成立しました。
業務システム・AI導入・住所まで全て応答が返り、最後は 「他に何かご不明な点はございますでしょうか?」とハルから 締めくくる自然な会話に。
応答時間の比較(体感)
ターン | 電話 | Framer |
|---|---|---|
1. 業務システム料金 | 15秒 | 数秒 |
2. AI導入相談 | 30秒以上で無応答 | 数秒 |
3. 採用 | 15秒(2と合体応答) | 数秒 |
4. 大阪の所在地 | 1分以上→自動切断 | 数秒 |
Framerは 各質問に対して即応 し、自然な会話のテンポでした。
ステップ9:結論 — 米国Twilio経由が主要因
検証結果から、以下が結論できます。
✅ エージェント自体の作りは正常(Framerで完璧に動く)
❌ 米国Twilio経由の電話品質に問題がある
国際通信の遅延(往復で数秒)
音声圧縮による日本語認識精度の低下
60秒無発話で強制切断される仕様との相性が悪い
つまり、本番運用には 日本番号の取得 が必須レベル。米国番号でのPoCには 構造的な限界がある とわかりました。
ステップ10:かかったコスト
ここまでの検証費用です。
項目 | 金額 |
|---|---|
Twilio 初期チャージ | $20(約3,000円) |
米国電話番号(初月) | $1.15 |
電話テスト2回分 | $0.5未満(合計約5分) |
ElevenLabs クレジット | 約1,000クレジット消費 |
合計 | 約3,200円 |
電話1通話あたりは 約20円 程度。Framer経由ならさらに安く済みます。
⚠️ VISKでの本番運用予定はありません
念のため明記しておきますが、VISKコーポレートサイトや代表電話で実際にこのシステムを稼働させる予定はありません。
理由は運用コストと、本検証で明らかになった米国番号構成の限界です。お客様にも国際電話料金の負担をかけてしまう現状の構成は、自社運用には合いません。
今回はあくまで 「うちが扱っている技術スタックの中で、こういう仕組みがどこまで動くか」 の技術検証です。
本番運用に向けた改善ポイント
検証で見えた課題と、本番運用するなら改善すべきポイントをまとめます。
1. 日本番号を取得する(最優先)
国際遅延の解消には、Twilioで日本番号を取るのが本筋。法人登録や追加審査が必要なので、調達には2〜3週間程度見ておく必要があります。
2. システムプロンプトに固有名詞の読み方を明記
「VISK」が「リスク」「ビスク」と認識される問題は、システムプロンプトに以下のような指示を入れることで一部対応可能:
3. 知識ベースの整備
今回ハルが「採用は扱っていません」と回答してしまう場面がありました。これは visk.co.jp の採用情報がうまく学習されていなかった可能性。知識ベースに何を入れるか は本番運用の質を大きく左右します。
4. タイムアウト時間の調整
60秒無発話で強制切断される仕様は、応答待ち時間が長くなりがちな国際電話と相性が悪い。日本番号にするか、ElevenAgentsの設定でタイムアウト時間を伸ばすかが必要です。
5. 法的整備
本番運用には:
「AIが対応しています」の事前案内
通話録音の取り扱い
個人情報保護
人間オペレーターへのエスカレーション設計
なども必要になります。
こんな業務に使えそう
検証結果は厳しい部分もありましたが、Framer版が完璧に動いた ことから、本格運用の可能性は十分見えました。具体的な活用シーンを挙げてみます。
営業時間外の代表電話対応
「お電話ありがとうございます。営業時間は平日9時から18時です。ご用件をお伺いし、担当者から折り返しご連絡いたします」みたいな対応をAIに任せる。深夜・休日の電話を逃さない仕組みになります。
飲食店・美容室の予約受付
「明日の19時から2名で」みたいな予約も、メニュー把握済みのAIなら対応可能。繁忙時間に接客が止まる問題を解消できます。
クリニックの初期問い合わせ
症状、希望日時、保険証の有無などをヒアリングして、受付に転送。受付スタッフの初期対応負荷を軽減できます。
採用問い合わせの一次対応
求人応募の問い合わせを24時間受付。基本的なFAQ(給与、勤務地、リモート可否など)に答えられます。
コールセンターの一次振り分け
「お問い合わせ内容を簡単にお聞きします」とAIがヒアリング→適切な担当部署にエスカレーション。オペレーターの工数を最適化できます。
まとめ
たどり着いた結論はこうでした。
ElevenAgentsとTwilioで電話受付AIは 半日で構築可能
ただし米国番号経由では 会話成立に課題あり(応答遅延・認識誤り・タイムアウト)
同じエージェントを Framer(ブラウザ)経由 で試したら全評価項目で成功
本番運用には 日本番号取得 と 知識ベース整備 が必須
「動かしてみたら課題が見えた」という、PoCとして意味のある検証になりました。
VISKでは、お客様の業務に合わせた電話受付AIの導入相談も可能です。「ウチでも検討したい」という企業様、お気軽にご相談ください。日本番号取得や運用設計を含めたPoC支援からご相談いただけます。
ある日、社長から指示が降ってきました。
「ElevenLabs ElevenAgentsでコールセンター作ってみてください」
ElevenLabs ElevenAgentsは、音声会話型のAIエージェントを作れるサービス。これでコールセンター業務をAIに任せる検証をしてほしい、という趣旨です。
「面白そうやな、半日もあれば動くやろ」と思ってたら、見事に予想を裏切られました。Web版(Framer埋め込み)は完璧に動くのに、電話版(Twilio経由)は応答がうまく返ってこない。
本記事は、同じプロンプト・同じエージェントで 電話とWebを比較検証した結果のレポート です。
ステップ1:まずはエージェント「ハル」を作る
最初に取り組んだのは、ElevenAgents上でのエージェント作成。VISKの案内係として動かすので、名前は 「ハル」 にしました。
設定はこんなところ:
名前:ハル
言語:日本語
ボイス:Otani(日本語対応の自然な声)
LLM:Gemini 2.5 Flash(ElevenAgentsのデフォルト)
知識源:visk.co.jp の内容を学習
システムプロンプトには「VISKの顧客サポートAIエージェントとして、丁寧で親しみやすい対応をする」という性格づけを書きました。
テンプレートベースで作れるので、30分程度で完了。拍子抜けするくらい早いです。
ステップ2:ブログ映えを狙ってFramerにも埋め込む
ハルが動くようになったところで、ふと思いつきました。
「これブログ記事にする時、Framerに埋め込んで実際に話せる状態を見せたら映えるんちゃう?」
VISKコーポレートサイトはFramerで構築しているので、Code Component機能でReactコンポーネントを作って、ElevenLabsのWidgetを埋め込んでみます。
// 簡略版 useEffect(() => { const script = document.createElement('script') script.src = 'https://elevenlabs.io/convai-widget/index.js' document.body.appendChild(script) }, []) return <elevenlabs-convai agent-id={agentId} />
実装はあっという間。これでブラウザからハルと音声で会話できる状態に。
ただし、これは検証目的で作ったもの。実際にVISKコーポレートサイトの公開ページには配置していません(理由は後述)。
ステップ3:社長から追加リクエスト「電話でもできるかも試してください」
ここまで報告したところ、社長から一言。
「電話でもできるかも試してください」
確かに、コールセンターって本来は電話で受けるもの。Webチャットだけでは検証として中途半端です。
ということで、本記事のメインパート、Twilio経由で電話番号を連携させる作業 に入ります。
ステップ4:Twilioで米国電話番号を取得
ElevenAgentsとTwilioは連携機能が用意されているので、Twilio側で電話番号を取得して、AccountSIDとAuthTokenを使ってElevenAgents側に登録する流れです。
Twilioアカウント作成&アップグレード
無料トライアルは制約があるので、最初からPay-as-you-goにアップグレード。アップグレード時に求められる情報がそこそこあります:
Customer Profile(氏名・電話番号・住所)
本人確認書類(運転免許証など)
Tax ID(個人なら空欄でOK)
初期チャージ $20
身分証アップロードまで含めて20分くらいでした。
日本番号を取ろうとすると法人登録や追加審査が必要で時間がかかるため、検証段階では 米国番号で十分 と判断。番号の月額料金は $1.15 でした。
ElevenAgents側で番号をインポート
ElevenAgents管理画面 → 左サイドバー「電話番号」→「Twilioから電話番号をインポート」。AccountSID / AuthToken / 電話番号 の3点を入力するだけ。
連携自体は3分で完了。最後にエージェント(ハル)をこの電話番号に紐付けて、ステータスが「ライブ」になれば完成です。
ステップ5:実際に電話をかけてみた(1回目:苦戦)
セットアップ完了。スマホから米国番号に発信します。
呼び出し音、応答音、ハルの冒頭挨拶までは順調。
「お電話ありがとうございます。株式会社VISKです...」
挨拶終わったので質問してみました。
返ってこない。
「あれ、AI壊れてる?」と思って、結局50秒で電話を切りました。
実際の会話
ログを見て原因究明
ElevenLabs管理画面の「会話」メニューで、さっきの通話ログを確認できます。
そこに警告が一つ:
Audio duration mismatch: this may indicate non-continuous audio input and can cause audio overlap or desync in playback.
また自動評価では:
評価項目 | 結果 |
|---|---|
サービス内容説明の提供 | ❌ failure |
担当者への連携提案 | ❌ failure |
適切なトーン | ✅ success |
日本語での対応 | ✅ success |
「会話が2ターンしかない、応答できる前に終わってしまった」というのが評価コメントでした。
つまり、応答準備中の無音を「壊れてる」と勘違いして切ってしまった のが真相。国際電話の音声処理は数秒〜十数秒かかることもあるようです。
ステップ6:「待つ作戦」で再挑戦(2回目:それでも厳しい)
学びを活かして再挑戦。今度は 質問のあと最低15秒は無言で待つ ルールで臨みます。
2回目のログ詳細
評価項目 | 結果 |
|---|---|
service_explanation_provided | ✅ success |
callback_offered | ❌ failure |
tone_appropriate | ✅ success |
japanese_used | ✅ success |
切断理由は:
No user message received for 60 seconds - the websocket connection was closed, or a network error occurred.
「60秒無発話で自動切断」のシステム仕様に引っかかった形。
衝撃の発見:ハルはちゃんと応答していた
しかし、文字起こしタブを開いて愕然としました。全ターンでハルがちゃんと応答していた のです。
各ターンの処理時間も記録されていて、LLM(応答生成)が1〜2秒、TTS(音声合成)が300〜400msで完了しています。ハル側の処理はむしろ高速 でした。
つまり、こちらでは「無音」だと思っていた時間に、ハルは応答を生成して音声を送信していた。それが何らかの理由で電話に届いていなかった、ということになります。
「AIが応答してくれない」のではなく「AIは応答してるのに音声が届いてない」のだとしたら、原因はAIエージェント自体ではなく、通信経路の方にある可能性が高い 。この仮説を検証するため、次のステップで通信経路だけ変えて試してみることにしました。
文字起こしを見て気づいた致命的問題
ログの文字起こしを見ると、最後の質問がこう認識されてました。
ユーザー:「リスクは大阪のどこにあるん?」
(´・ω・`)
「VISK」が「リスク」に誤認識されてた…!国際電話の音声品質では「V」音の認識が難しいようです。
つまり1回目より進歩したものの、まだ 応答遅延と認識ミス で会話として成立してない状態。「これは電話そのものに問題があるんちゃうか?」と仮説を立てました。
ステップ7:仮説検証 — Framer版と比較してみる
電話の問題なのか、ElevenLabsエージェント自体の問題なのか。通信経路だけ変えて、同じ条件で比較検証 することにしました。
実験設計
変数 | 設定 |
|---|---|
エージェント | 同じ「ハル」 |
システムプロンプト | 同じ |
知識ベース | 同じ(visk.co.jp) |
質問内容と順番 | 同じ4つの質問 |
唯一の違い | 通信経路(電話 vs Framerブラウザ) |
クリーンな比較実験です。
ステップ8:比較結果 — 違いが明確すぎた
サマリー比較
項目 | 📞 電話(Twilio米国) | 💻 Framer(ブラウザ) |
|---|---|---|
通話ステータス | ❌ エラー | ✅ 成功 |
接続時間 | 60秒タイムアウト | 3分8秒(自然終了) |
切断理由 | システム強制切断 | ハルが自然に締めた |
警告 | Audio duration mismatch | なし |
基準評価 | 3 / 4 success | 4 / 4 success ⭐ |
service_interest 抽出 | ❌ null | ✅ 「AIシステム開発」 |
callback_offered | ❌ failure | ✅ success |
Framer版は全項目で勝利。
認識精度の比較
Framerも完璧ではないものの、「ビスク」(VISKのローマ字読み) とまだ近い。電話の「リスク」は意味が完全に変わってしまいます。
Framer版の実際のやり取り
電話版と違って、Framer版では全ターンスムーズに会話が成立しました。
業務システム・AI導入・住所まで全て応答が返り、最後は 「他に何かご不明な点はございますでしょうか?」とハルから 締めくくる自然な会話に。
応答時間の比較(体感)
ターン | 電話 | Framer |
|---|---|---|
1. 業務システム料金 | 15秒 | 数秒 |
2. AI導入相談 | 30秒以上で無応答 | 数秒 |
3. 採用 | 15秒(2と合体応答) | 数秒 |
4. 大阪の所在地 | 1分以上→自動切断 | 数秒 |
Framerは 各質問に対して即応 し、自然な会話のテンポでした。
ステップ9:結論 — 米国Twilio経由が主要因
検証結果から、以下が結論できます。
✅ エージェント自体の作りは正常(Framerで完璧に動く)
❌ 米国Twilio経由の電話品質に問題がある
国際通信の遅延(往復で数秒)
音声圧縮による日本語認識精度の低下
60秒無発話で強制切断される仕様との相性が悪い
つまり、本番運用には 日本番号の取得 が必須レベル。米国番号でのPoCには 構造的な限界がある とわかりました。
ステップ10:かかったコスト
ここまでの検証費用です。
項目 | 金額 |
|---|---|
Twilio 初期チャージ | $20(約3,000円) |
米国電話番号(初月) | $1.15 |
電話テスト2回分 | $0.5未満(合計約5分) |
ElevenLabs クレジット | 約1,000クレジット消費 |
合計 | 約3,200円 |
電話1通話あたりは 約20円 程度。Framer経由ならさらに安く済みます。
⚠️ VISKでの本番運用予定はありません
念のため明記しておきますが、VISKコーポレートサイトや代表電話で実際にこのシステムを稼働させる予定はありません。
理由は運用コストと、本検証で明らかになった米国番号構成の限界です。お客様にも国際電話料金の負担をかけてしまう現状の構成は、自社運用には合いません。
今回はあくまで 「うちが扱っている技術スタックの中で、こういう仕組みがどこまで動くか」 の技術検証です。
本番運用に向けた改善ポイント
検証で見えた課題と、本番運用するなら改善すべきポイントをまとめます。
1. 日本番号を取得する(最優先)
国際遅延の解消には、Twilioで日本番号を取るのが本筋。法人登録や追加審査が必要なので、調達には2〜3週間程度見ておく必要があります。
2. システムプロンプトに固有名詞の読み方を明記
「VISK」が「リスク」「ビスク」と認識される問題は、システムプロンプトに以下のような指示を入れることで一部対応可能:
3. 知識ベースの整備
今回ハルが「採用は扱っていません」と回答してしまう場面がありました。これは visk.co.jp の採用情報がうまく学習されていなかった可能性。知識ベースに何を入れるか は本番運用の質を大きく左右します。
4. タイムアウト時間の調整
60秒無発話で強制切断される仕様は、応答待ち時間が長くなりがちな国際電話と相性が悪い。日本番号にするか、ElevenAgentsの設定でタイムアウト時間を伸ばすかが必要です。
5. 法的整備
本番運用には:
「AIが対応しています」の事前案内
通話録音の取り扱い
個人情報保護
人間オペレーターへのエスカレーション設計
なども必要になります。
こんな業務に使えそう
検証結果は厳しい部分もありましたが、Framer版が完璧に動いた ことから、本格運用の可能性は十分見えました。具体的な活用シーンを挙げてみます。
営業時間外の代表電話対応
「お電話ありがとうございます。営業時間は平日9時から18時です。ご用件をお伺いし、担当者から折り返しご連絡いたします」みたいな対応をAIに任せる。深夜・休日の電話を逃さない仕組みになります。
飲食店・美容室の予約受付
「明日の19時から2名で」みたいな予約も、メニュー把握済みのAIなら対応可能。繁忙時間に接客が止まる問題を解消できます。
クリニックの初期問い合わせ
症状、希望日時、保険証の有無などをヒアリングして、受付に転送。受付スタッフの初期対応負荷を軽減できます。
採用問い合わせの一次対応
求人応募の問い合わせを24時間受付。基本的なFAQ(給与、勤務地、リモート可否など)に答えられます。
コールセンターの一次振り分け
「お問い合わせ内容を簡単にお聞きします」とAIがヒアリング→適切な担当部署にエスカレーション。オペレーターの工数を最適化できます。
まとめ
たどり着いた結論はこうでした。
ElevenAgentsとTwilioで電話受付AIは 半日で構築可能
ただし米国番号経由では 会話成立に課題あり(応答遅延・認識誤り・タイムアウト)
同じエージェントを Framer(ブラウザ)経由 で試したら全評価項目で成功
本番運用には 日本番号取得 と 知識ベース整備 が必須
「動かしてみたら課題が見えた」という、PoCとして意味のある検証になりました。
VISKでは、お客様の業務に合わせた電話受付AIの導入相談も可能です。「ウチでも検討したい」という企業様、お気軽にご相談ください。日本番号取得や運用設計を含めたPoC支援からご相談いただけます。

























