「使ってみた」の、その先へ
前回までの記事では、話しかけるだけで作れるAI電話を、実際に触ってご紹介してきました。すると、こんな相談が増えてきたんです。「実際に自社の営業に組み込むなら、どう作るのがいいの?」
前回記事(【第2弾】AI電話はどこまでいける? Grokの音声AIで、声の調整から営業電話・多言語まで試してみました)
そこで今回は、少しだけ"作る側"の視点でお話しします。とはいえ、難しい専門書のような話ではありません。「AIに営業電話を任せよう」と思って作り始めると、実は最初に大きな分かれ道がある――今回は、その分かれ道と、料金の違いまで、できるだけかみくだいてお伝えします。
まず、AI電話は「3つの部品」でできています
どんなAI電話も、フタを開けてみると、だいたい3つの部品の組み合わせでできています。人間にたとえると、こんな感じです。
STT(音声認識)=「耳」 … 相手の声を聞き取って、文字にする
LLM(頭脳)=「頭」 … 内容を理解して、次に何を言うか考える
音声(発話)=「口」 … 考えたことを、声にして返す
聞いて、考えて、話す。たったこれだけです。そして面白いのが、この「口」の部分をどう作るかで、設計がまるっと2つに分かれるんですね。
設計①:一体型AI音声(ぜんぶ1つのAIにおまかせ)
1つ目は、3つの部品を1つのAIがまとめて担当する方式です。前回まで触ってきたGrok(xAI)のツールが、まさにこれ。相手の声を聞いて、考えて、その場で声を作って返す――全部ひとりでこなす、いわば"何でも屋さん"です。
いいところ
台本も録音もいらない。指示を書くだけで、すぐ会話が成立する
想定外の質問がきても、その場で考えて答えてくれる
とにかく手軽で、応答も速い
気になるところ
声は「AIが合成した音声」。かなり自然ですが、生身の人の声そのものではありません
「この人の声で」と特定の誰かを完全再現するには、まだ制約があります
問い合わせ対応や受付のように、何を聞かれるか読めない・柔軟さがほしい場面にぴったりです。
設計②:録音再生型(人の声を、録っておいて流す)
2つ目は、ちょっと発想が違います。あらかじめ人が話した声を録音しておいて、AIは「今はどの録音を流すか」を選ぶだけ、という方式です。3つ目の「口」を、AIの合成音声ではなく"人の生声の再生"に置き換えるわけですね。
実は、世の中のAI営業電話サービスの多くが、この方式を採っています。
いいところ
なんといっても完全に自然な"人の声"。合成音声っぽさがなく、聞く人が安心します
何度かけても、言い回しも声のトーンもブレない
話す本人が録音するだけなので、声のクローンのような制約も受けにくい
気になるところ
決まった流れ向きです。録音していないことは、答えられません
想定される受け答えを、先に録音しておく手間はかかります
営業のアポ取りのように、話す流れがある程度決まっている場面では、この方式が本当に強いです。
2つの設計、ざっくり比べると
①一体型AI音声 | ②録音再生型 | |
|---|---|---|
声 | AIが合成 | 人の生声(録音) |
自然さ | 高い(ただしAI音声) | 最高(人の声そのもの) |
柔軟性 | 高い(想定外もOK) | 低い(台本の範囲内) |
手軽さ | すぐ作れる | 録音の準備が必要 |
向く用途 | 受付・FAQ・一次対応 | 台本の決まった営業架電 |
どちらが偉い、という話ではなくて、用途によって"正解"が変わる。ここがいちばん大事なところです。
ツールの選び方 ― どこに、何を使う?
とくに「設計②:録音再生型」を作るときは、3つの部品をそれぞれ別のツールで組み合わせます。代表的な顔ぶれをご紹介します。
STT(耳):
Vapiのような音声エージェント基盤が、通話のやりとりと音声認識をまとめて引き受けてくれますLLM(頭):
Gemini Flash-Liteのような軽くて安いモデルが、「次はどの録音を流すか」を判断する役に向いています音声(口):録音再生型では合成音声を使わず、用意した録音の再生を、通話をさばく基盤(Vapiなど)が担当します
つまり、「1つのAIに全部おまかせ(設計①)」でいくか、「役割ごとに得意なツールを組み合わせる(設計②)」でいくか、の違いでもあるんですね。
気になる料金 ― ここが意外と差が出ます
「で、結局いくらかかるの?」というのが、いちばん気になるところですよね。ここが2つの設計で、けっこう違ってきます。
① 一体型(Grok)は、全部込みでシンプル Grokの一体型は、耳も頭も口もぜんぶ込みで1分あたり約$0.05(約8円)。これに電話番号の料金が1分$0.01ほど乗るくらいで、とてもシンプルです。
② 組み合わせ型(Vapiなど)は、"表示価格+積み上げ"に注意 一方、Vapiのような組み合わせ型は、表示上は「1分$0.05」と見えても、これは基盤の利用料だけなんです。実際には、この上に部品ごとの料金が積み上がります。
内訳 | 目安(1分あたり) |
|---|---|
基盤の利用料(Vapi) | 約$0.05 |
音声認識(STT) | 約$0.01 |
頭脳(LLM) | 約$0.02〜0.20 |
音声合成(TTS) | 約$0.04 |
電話回線 | 約$0.01 |
これを合計すると、**実際は1分あたり$0.13〜0.31(およそ20〜48円)**になることが多い、というわけです。表示価格だけ見て契約すると「思ったより高い」となりがちな、いわゆる"隠れコスト"ですね。
ただし、録音再生型なら音声合成(TTS)の分(約$0.04)は使わないので、そのぶんは浮きます。それでも、一体型よりは高めになります。
フェアに見ると、こういうことです。 一体型は「安くて、シンプル」。組み合わせ型は「やや高いけれど、人の声の自然さや細かい制御という"自由度"を買っている」。料金の差は、そのまま「手軽さ」と「作り込みの自由度」のトレードオフになっているんですね。
結局、どちらを選べばいい?
判断の軸は、シンプルです。
何を聞かれるか読めない・柔軟に答えたい(受付、問い合わせ、FAQ)→ 設計①:一体型AI音声
話す流れが決まっていて、人の声の自然さを最優先したい(営業のアポ取り)→ 設計②:録音再生型
大事なのは、「どのツールが一番いいか」から選ばないこと。まず"自社の用途にどっちの設計が合うか"を決めてから、ツールを選ぶ。この順番を逆にすると、せっかくのAIもうまくハマりません。
まとめ ― "設計から選べる"のが、いちばんの強み
AI電話は、ただ「入れる」ものではなく、用途に合わせて設計を選ぶもの。柔軟さがほしいなら一体型、人の声の自然さと安定を求めるなら録音再生型。そして料金も、その選び方しだいで変わってきます。
このあたりの「どっちが自社に合うか」「今の仕組みにどう組み込むか」を一緒に考えるのが、私たちのようなシステム開発会社の出番です。
「うちの営業電話は、どちらの設計が合う?」 「今の仕組みに、AIをどう組み込める?」
そんなご相談があれば、VISKが用途の整理から設計・実装まで、まるっとお手伝いします。お気軽にお声がけください。
本記事の情報は2026年7月時点のものです。各ツールの仕様・料金は変更される場合があります。
AI・システム開発のこと、VISKにご相談ください
「自社の業務にAIを活かせないか」「この作業、自動化できないか」——
そんな漠然とした段階からで大丈夫です。大阪のAI・システム開発会社VISKが、御社の課題に合わせて、企画から開発・検証までサポートします。


