
スマホだけで「歩けるバーチャル内覧」は作れるのか?無料ツールで検証してみた
スマホだけで「歩けるバーチャル内覧」は作れるのか?無料ツールで検証してみた


はじめに:あの動画を見て「これはすごい」と思った
Xのタイムラインに流れてきた1本の動画。スマホで撮影した倉庫の中を、FPSゲームのようにヌルヌルと歩き回っている。まるでゲームの世界に入り込んだような没入感。
「Scaniverse + SuperSplatで、誰でも無料でバーチャル内覧が作れる」
不動産業界にとって革命的な話だ。本当にそんな簡単にできるのか?実際に自分で試してみることにした。
仕組み:Gaussian Splatting × Walk Mode
ざっくり言うと、こういう流れらしい。
スマホの3Dスキャンアプリ(Scaniverse / Polycam)で部屋を歩きながら撮影
SuperSplat(ブラウザベースの無料エディター)にデータをアップロード
新しく追加されたWalk Modeで、物件の中を一人称視点で歩ける
SuperSplatはPlayCanvasが開発しているオープンソースのGaussian Splatエディターで、最近のアップデートでWalk Modeが追加された。クリックした場所に移動したり、WASDキーでFPSのように動き回れるようになった。
まずはSuperSplatのWalk Modeを体験してみた
自分で撮影する前に、まずはSuperSplatに公開されているシーンでWalk Modeを試してみた。SuperSplatのトップページ(Explore)には他のユーザーが公開したGaussian Splatがずらりと並んでいる。誰かの家のシーンを選んでみた。
キーボードの「3」を押すとWalk Modeに切り替わる。クリックした場所に自動で歩いていく。WASDキーでFPSゲームのように自由に動き回れる。スペースキーでジャンプもできる。
これはめちゃくちゃ楽しい。
現実の建物の中を、Call of DutyやVALORANTのように一人称視点で歩き回れる。しかもこれが写真から生成された3Dデータだという事実がすごい。不動産の内覧がこれでできたら革命だ。
「よし、自分でもやってみよう」

検証スタート:まずは自室で撮ってみる
Polycam vs Scaniverse、どっちを使う?
最初に候補に上がったのは2つのアプリ。
Polycam:高品質だが、BASICプランで月額¥5,000〜
Scaniverse:Niantic製、無料、アカウント不要
「100%無料」を検証したいので、まずはScaniverseから。ちなみに自分のiPhone 15 PlusにはLiDARセンサーが搭載されていない(Proモデル限定)。カメラだけでのスキャンになる。
自室をスキャンした結果:呪われた部屋が爆誕
Scaniverseの「クラシック」モードでスキャンを開始。部屋の中をゆっくり歩きながら撮影した。
結果は…ガビガビだった。
LiDARなしのカメラのみということもあり、画質はかなり粗い。しかも問題はそれだけではなかった。
自分の部屋が想像以上に散らかっていたのだ。3Dスキャンは「ありのままの現実」を写し取る。普段は気にならない散らかり具合が、3D空間になると妙にリアルに強調される。控えめに言って呪われた部屋のようだった。

部屋を片付けてPolycamで再挑戦→課金の壁に心を折られる
Scaniverseのガビガビ映像を見て、「これはアプリの問題だ」と思った自分は、まず部屋を徹底的に片付けることにした。子供が散らかした絵本を一冊ずつ棚に戻し、昼に食べた鍋を洗って片付け、掃除機をかけ、仕上げにちいかわの仲間たちのぬいぐるみを映えるように配置した。バーチャル内覧の検証のはずが、いつの間にか大掃除になっている。
そしてPolycamをインストール。撮影自体は無料でできて、確かにScaniverseより綺麗に撮れる。「やはりアプリを変えれば違うな」と手応えを感じながらスキャン完了。
さあ、SuperSplatにアップロードするためにPLY形式でエクスポートしよう。エクスポート画面を開く。形式の一覧をスクロールしていくと…
PLY(Point Cloud)→「BIZ」マーク。有料。
あれだけ部屋を片付けたのに。
無料で使えるGLTFやOBJはメッシュ形式で、SuperSplatが受け付けるGaussian Splat形式のPLYとは別物だった。綺麗に撮れたデータは目の前にあるのに、外に持ち出せない。
Polycam BASICプランの料金:
月払い:¥5,000/月
年払い:¥25,000/年(月あたり約¥2,083)
年払いには7日間の無料トライアルがあるので、その間にエクスポートして解約する手もある。が、解約し忘れて¥25,000請求される未来が見えた。怖い。
あの片付けはなんだったのか。泣く泣くScaniverseに戻ることにした。
後日、気を取り直してオフィスの会議室で撮り直し
せっかく片付けた自室のデータはPolycamの課金の壁に阻まれて使えない。Scaniverseの自室データはガビガビすぎる。一旦この検証から離れて冷静になることにした。
数日後、オフィスに出社した際に「そうだ、会議室があるじゃないか」と思い立った。整理された空間なら多少ガビガビでも見栄えはマシになるはず。Scaniverseで会議室を一周スキャンして、PLY形式でエクスポート。AirDropでMacに送って、SuperSplatのエディターにドラッグ&ドロップ。
SuperSplatにアップロード:宇宙遊泳問題
SuperSplatのエディターにPLYを読み込むと、部屋のスキャンデータは表示された。しかし…
部屋を天井から見下ろしている。

インターステラーか?
Walk Modeは使えない…?
さて、いよいよWalk Modeを試そうとしたが、エディター内にはそれらしいボタンが見当たらない。
調べてみると、Walk Modeは公開(Publish)した後のビューアーで使える機能だった。さらに、Walk Modeに必要なコリジョン(衝突判定)生成は現在「開発者プレビュー」段階。一部のクリエイターにのみ開放されていて、自分でアップロードしたSplatには自動で有効にならない。
SuperSplatに掲載されている他の人のSplat(倉庫のシーンなど)ではWalk Modeが使えた。しかし自分のSplatでは使えない。
代わりにキーボードの「2」を押すとFlyモードになった。WASDで移動すると…**完全に宙に浮いている。**重力の概念がない。床の上を歩くはずが、天井を突き抜け、壁をすり抜け、部屋の上空から見下ろしている。

検証結果まとめ
項目 | 結果 |
|---|---|
スマホだけでスキャンできるか | ⭕ できる(Scaniverse無料) |
LiDARなしでもスキャンできるか | ⭕ できるが画質は粗い |
SuperSplatに無料でアップできるか | ⭕ できる(アカウント登録必要) |
Walk Modeで歩き回れるか | ❌ 現時点では開発者プレビュー段階 |
Flyモードで見て回れるか | ⭕ できるが幽体離脱状態 |
Polycamの高画質データを無料で使えるか | ❌ エクスポートは有料(BASIC ¥5,000/月〜) |
不動産業者がすぐ使えるか | △ もう少し待つ必要あり |
正直な感想
「100%無料でバーチャル内覧が作れる」は、現時点では半分本当、半分はまだ早い。
できること:
スマホで3Dスキャンして、ブラウザ上で3Dモデルとして公開するところまでは完全無料
Flyモードで(宙に浮いて物件を巡回)は可能
まだできないこと:
Walk Mode(地面を歩く)は開発者プレビューで一般開放されていない
LiDARなしだと画質がかなり厳しい
Polycamの高画質データを使うには課金が必要
ただ、Walk Modeの一般開放は「近日中」とのこと。そうなれば、LiDAR搭載のiPhone Proを持っている不動産業者なら、本当にスマホ1台で「歩けるバーチャル内覧」が作れるようになる。
技術の進化は速い。半年後にはこの記事の結論が変わっているかもしれない。
使ったツール
Scaniverse(iOS / 無料)- 3Dスキャン撮影
Polycam(iOS / 無料〜¥5,000/月)- 3Dスキャン撮影(高画質)
SuperSplat(ブラウザ / 無料)- Gaussian Splatエディター&ビューアー
iPhone 15 Plus(LiDARなし)
はじめに:あの動画を見て「これはすごい」と思った
Xのタイムラインに流れてきた1本の動画。スマホで撮影した倉庫の中を、FPSゲームのようにヌルヌルと歩き回っている。まるでゲームの世界に入り込んだような没入感。
「Scaniverse + SuperSplatで、誰でも無料でバーチャル内覧が作れる」
不動産業界にとって革命的な話だ。本当にそんな簡単にできるのか?実際に自分で試してみることにした。
仕組み:Gaussian Splatting × Walk Mode
ざっくり言うと、こういう流れらしい。
スマホの3Dスキャンアプリ(Scaniverse / Polycam)で部屋を歩きながら撮影
SuperSplat(ブラウザベースの無料エディター)にデータをアップロード
新しく追加されたWalk Modeで、物件の中を一人称視点で歩ける
SuperSplatはPlayCanvasが開発しているオープンソースのGaussian Splatエディターで、最近のアップデートでWalk Modeが追加された。クリックした場所に移動したり、WASDキーでFPSのように動き回れるようになった。
まずはSuperSplatのWalk Modeを体験してみた
自分で撮影する前に、まずはSuperSplatに公開されているシーンでWalk Modeを試してみた。SuperSplatのトップページ(Explore)には他のユーザーが公開したGaussian Splatがずらりと並んでいる。誰かの家のシーンを選んでみた。
キーボードの「3」を押すとWalk Modeに切り替わる。クリックした場所に自動で歩いていく。WASDキーでFPSゲームのように自由に動き回れる。スペースキーでジャンプもできる。
これはめちゃくちゃ楽しい。
現実の建物の中を、Call of DutyやVALORANTのように一人称視点で歩き回れる。しかもこれが写真から生成された3Dデータだという事実がすごい。不動産の内覧がこれでできたら革命だ。
「よし、自分でもやってみよう」

検証スタート:まずは自室で撮ってみる
Polycam vs Scaniverse、どっちを使う?
最初に候補に上がったのは2つのアプリ。
Polycam:高品質だが、BASICプランで月額¥5,000〜
Scaniverse:Niantic製、無料、アカウント不要
「100%無料」を検証したいので、まずはScaniverseから。ちなみに自分のiPhone 15 PlusにはLiDARセンサーが搭載されていない(Proモデル限定)。カメラだけでのスキャンになる。
自室をスキャンした結果:呪われた部屋が爆誕
Scaniverseの「クラシック」モードでスキャンを開始。部屋の中をゆっくり歩きながら撮影した。
結果は…ガビガビだった。
LiDARなしのカメラのみということもあり、画質はかなり粗い。しかも問題はそれだけではなかった。
自分の部屋が想像以上に散らかっていたのだ。3Dスキャンは「ありのままの現実」を写し取る。普段は気にならない散らかり具合が、3D空間になると妙にリアルに強調される。控えめに言って呪われた部屋のようだった。

部屋を片付けてPolycamで再挑戦→課金の壁に心を折られる
Scaniverseのガビガビ映像を見て、「これはアプリの問題だ」と思った自分は、まず部屋を徹底的に片付けることにした。子供が散らかした絵本を一冊ずつ棚に戻し、昼に食べた鍋を洗って片付け、掃除機をかけ、仕上げにちいかわの仲間たちのぬいぐるみを映えるように配置した。バーチャル内覧の検証のはずが、いつの間にか大掃除になっている。
そしてPolycamをインストール。撮影自体は無料でできて、確かにScaniverseより綺麗に撮れる。「やはりアプリを変えれば違うな」と手応えを感じながらスキャン完了。
さあ、SuperSplatにアップロードするためにPLY形式でエクスポートしよう。エクスポート画面を開く。形式の一覧をスクロールしていくと…
PLY(Point Cloud)→「BIZ」マーク。有料。
あれだけ部屋を片付けたのに。
無料で使えるGLTFやOBJはメッシュ形式で、SuperSplatが受け付けるGaussian Splat形式のPLYとは別物だった。綺麗に撮れたデータは目の前にあるのに、外に持ち出せない。
Polycam BASICプランの料金:
月払い:¥5,000/月
年払い:¥25,000/年(月あたり約¥2,083)
年払いには7日間の無料トライアルがあるので、その間にエクスポートして解約する手もある。が、解約し忘れて¥25,000請求される未来が見えた。怖い。
あの片付けはなんだったのか。泣く泣くScaniverseに戻ることにした。
後日、気を取り直してオフィスの会議室で撮り直し
せっかく片付けた自室のデータはPolycamの課金の壁に阻まれて使えない。Scaniverseの自室データはガビガビすぎる。一旦この検証から離れて冷静になることにした。
数日後、オフィスに出社した際に「そうだ、会議室があるじゃないか」と思い立った。整理された空間なら多少ガビガビでも見栄えはマシになるはず。Scaniverseで会議室を一周スキャンして、PLY形式でエクスポート。AirDropでMacに送って、SuperSplatのエディターにドラッグ&ドロップ。
SuperSplatにアップロード:宇宙遊泳問題
SuperSplatのエディターにPLYを読み込むと、部屋のスキャンデータは表示された。しかし…
部屋を天井から見下ろしている。

インターステラーか?
Walk Modeは使えない…?
さて、いよいよWalk Modeを試そうとしたが、エディター内にはそれらしいボタンが見当たらない。
調べてみると、Walk Modeは公開(Publish)した後のビューアーで使える機能だった。さらに、Walk Modeに必要なコリジョン(衝突判定)生成は現在「開発者プレビュー」段階。一部のクリエイターにのみ開放されていて、自分でアップロードしたSplatには自動で有効にならない。
SuperSplatに掲載されている他の人のSplat(倉庫のシーンなど)ではWalk Modeが使えた。しかし自分のSplatでは使えない。
代わりにキーボードの「2」を押すとFlyモードになった。WASDで移動すると…**完全に宙に浮いている。**重力の概念がない。床の上を歩くはずが、天井を突き抜け、壁をすり抜け、部屋の上空から見下ろしている。

検証結果まとめ
項目 | 結果 |
|---|---|
スマホだけでスキャンできるか | ⭕ できる(Scaniverse無料) |
LiDARなしでもスキャンできるか | ⭕ できるが画質は粗い |
SuperSplatに無料でアップできるか | ⭕ できる(アカウント登録必要) |
Walk Modeで歩き回れるか | ❌ 現時点では開発者プレビュー段階 |
Flyモードで見て回れるか | ⭕ できるが幽体離脱状態 |
Polycamの高画質データを無料で使えるか | ❌ エクスポートは有料(BASIC ¥5,000/月〜) |
不動産業者がすぐ使えるか | △ もう少し待つ必要あり |
正直な感想
「100%無料でバーチャル内覧が作れる」は、現時点では半分本当、半分はまだ早い。
できること:
スマホで3Dスキャンして、ブラウザ上で3Dモデルとして公開するところまでは完全無料
Flyモードで(宙に浮いて物件を巡回)は可能
まだできないこと:
Walk Mode(地面を歩く)は開発者プレビューで一般開放されていない
LiDARなしだと画質がかなり厳しい
Polycamの高画質データを使うには課金が必要
ただ、Walk Modeの一般開放は「近日中」とのこと。そうなれば、LiDAR搭載のiPhone Proを持っている不動産業者なら、本当にスマホ1台で「歩けるバーチャル内覧」が作れるようになる。
技術の進化は速い。半年後にはこの記事の結論が変わっているかもしれない。
使ったツール
Scaniverse(iOS / 無料)- 3Dスキャン撮影
Polycam(iOS / 無料〜¥5,000/月)- 3Dスキャン撮影(高画質)
SuperSplat(ブラウザ / 無料)- Gaussian Splatエディター&ビューアー
iPhone 15 Plus(LiDARなし)
